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全ては”サムライ”が暮らしていた古民家を守るためー日本遺産センターコンシェルジュ:ペルラキ・デネーシュさんが語る観光の形

こんにちは!ライターの前田です!

 

「津和野にハンガリー出身の方がいるの!?」

外国籍の方の津和野移住に驚いていたことが遠く昔のことに感じるほど町に馴染み、様々なところでコミュニティを築いているのが、ハンガリー出身のペルラキ・デーネシュ(以下、ペルラキさん)さん。2017年4月に移住してきた彼は現在、日本遺産センターでコンシェルジュを務め、流暢な日本語はもちろん、外国人向けに英語での案内も行なっています。またコンシェルジュだけではなく、町内のレストランメニューの翻訳や津和野城跡の活用法の検討にも携わるなど、多岐に渡って活動しています。

 

今回は、津和野の観光プロジェクトの内容や知られざるバックグラウンドについてお話を伺いました。

 

『葉隠』に書かれている武士道の世界に惹かれて、日本にやってきた…!?

ハンガリーでは国際送金システムのプロジェクトマネージャーをやっていた!?

津和野でやりたいのは、茅葺き屋根と古民家の保存!?

津和野には無限の観光ポテンシャルがあるのに、十分に活かしきれていない!?

 

ペルラキさんワールド満載の話を、ぜひご覧ください!

 

 

 

 

国際送金のプロジェクトマネージャーが津和野で観光に携わる?!

 

ーペルラキさん、今日はよろしくお願いします。ちなみに、これまで取材を受けたことはありますか?

 

ペルラキさん:ほとんど無いですね。今年は、NHK山口の番組で外国人としてインタビューを受けたけどそれくらい。あんまり書かれてはいけないことを言ってしまうかもしれない(笑)

 

ーハハハ!そういう話を聞けると思って取材をお願いしました(笑)今日はよろしくお願いします。

まず伺いたいのが、ペルラキさんの活動についてです。日本遺産センターでのコンシェルジュ以外にも色々なことをされているとのことですが、他にどのような活動をされているのですか?

 

ペルラキさん:郷土料理の歴史やストーリーを英訳した説明書を町内の各店舗に配布したこともあります。また、ジャパントラベルやNonDependentというホームページに外国人観光客向けの記事の提供も行なっています。

 

ー海外出身というバックグラウンドを生かして、精力的に活動しているのですね。そもそもはどういったキッカケで津和野に関わることになったのですか?

 

ペルラキさん:津和野に移住する以前は山口大学の学生として観光学を専攻していました。その時に津和野を訪れるインバウンドツアーの通訳をやっていたんです。何度か訪れる中で役場と関わる機会もあり、その際に津和野で仕事をしないかという誘いを受けたんです。古い町並みに加え、津和野はコンパクトで人が歩きやすい町。ここだったら、自分の関心がある観光を通じて町を盛り上げていける可能性があると思って、この地に移住することを決めたんです。

 

ー町には、フランスやドイツの方を中心に、毎年多くの外国人の旅行者が訪れます。規模感に加えて、古い町並みなんかは特に海外の人を惹きつける要因かもしれませんね。観光という分野自体には元々興味があったんですか?

 

ペルラキさん:山口大学では観光学を専攻していますが、ハンガリーの大学ではコンピュータプログラミングと経済を中心に学んでいました。また、日本に来る前は国際送金システムのプロジェクトマネージャーをしていたんですよ。

 

ーそうなんですね!今の活動や専攻とは全然違うじゃないですか?

 

ペルラキさん:でもそういった業界で働いていたお陰で、相手の立場で物事を考えるというビジネスプロセスは身についたと思います。例えば、津和野の町家ステイなんかはものすごくたくさんのお金をかけて建設され、古民家を思わせる外装も良いし、内装もとても居心地の良い空間になっています。普通の観光客はもちろん、外国人のニーズは必ずあるはずなのに、インバウンド向けのホームページがまだないんですよね。

 

ー結局、欲しい人に必要な内容が行き届いていないというのが、地方の観光が伸び悩んでいる原因だと思うんですよね。だからこそ、戦略的にどういった人にどのタイミングで、どのような内容を届けたいのかを考えることが大切だと思います。

 

ペルラキさん:私の外国人という立場を、まちづくりに関わる人にはもっと利用してもらいたいですね。町には観光や国際交流に関わっているいくつかの団体があるので、できる限り何でもやっていきたいという気持ちなんです。

 

 

古民家を助けられる一番の可能性が観光にあった

 

ーペルラキさんが観光に関する活動を津和野で、この日本でやっている背景について教えてもらいたいです。

 

ペルラキさん:元々は、日本に古くからある茅葺き屋根の古民家の保存をやっていきたいと思ったからなんです。キッカケはハンガリーでの大学在学中、初めて来日した徳島県で古民家の管理人をやったことでした。それまでも武士道に関する『葉隠(はがくれ)』という本を読んだことや、『ラスト・サムライ』や『ロスト・イン・トランスレーション』という映画を通じて日本に興味はあったのですが、まだ言葉もそれほど話せないし文化もわからない中で、初めて見た茅葺きの家には本当に感動しました。茅の屋根の下に囲炉裏を囲む空間がある。これが、あの”サムライ”が暮らしていた家かと…。それからさらに日本への興味が湧き、ハンガリーに帰っても真剣に勉強するようになりました。

 

ー茅葺の古民家なんて、実際に日本で暮らしていても今ではほとんど見たことがないですね。津和野には永明寺(ようめいじ)を始め、まだいくつか残っている建物がありますよね。

 

ペルラキさん:鷲原八幡宮や西周旧居もそうですね。けど、一部屋根が腐ってたりボロボロになってしまっていたりする建物もあります。もう茅葺きを修復する技術を持った人も少ないし、地域の茅を使うこともない。昔は集落全体で集まって、1つの世帯の屋根を直すということもやっていたみたいだけど、今はその文化も失われつつあります。

 

ー地域の中で助け合う文化が廃れていった結果、このようなことになってしまったんですね。昨今の地域活動の中でも、茅葺き屋根古民家の保存に関わっているという話はよく耳にします。

 

ペルラキさん:今はSNSで、古民家再生に関するコミュニティも立ち上げられていて、距離を超えて人の協力を得ることが可能になってきました。私は、そういった古民家を助ける一番の可能性は観光にあると思っています。だからこそ、それを軸として活動をしているんです。

 

ー日本の古民家もいいと思うけど、海外ー特にヨーロッパの美しい町並みや家も僕は好きだけどなぁ。ペルラキさんは日本の古民家のどこにそれほど魅力を感じているんですか?

 

ペルラキさん:日本の古民家は夏向きに作られているでしょ。夏の日差しのある時に、障子を外したらパァーッと明るい空気が家の中に入ってくる。そんな明るい雰囲気が好きだったんです。ハンガリーの古民家は、日本のと比べると暖かいんだけど全体的にちょっと暗いかな。

 

ーなるほど。それは海外の出身であるペルラキさんだからこその視点ですね。これから古民家再生も含めて、ペルラキさんは観光にそのように関わっていくつもりですか?

 

ペルラキさん:津和野には、まだまだ観光が振興されていくポテンシャルがあると思っています。まずは、古い日本らしい建物に赤い石州瓦が乗っている美しい町並みがあること。それを利用する1つとして、古民家を活用した民泊を行うことを考えています。来年の中頃には山口大学に戻って講師として教鞭に立つ予定ですが、定期的に津和野に戻り、民泊事業に関わっていくつもりです。

 

ー津和野の観光は、今後どうなっていくべきだと考えますか。

 

ペルラキさん:津和野には和紙すきや煎茶といった古くから受け継がれてきた文化があるのですが、それを継承していく人がいないんです。伝統文化に興味がある人はたくさんいるだろうし、体験型の観光はまだまだ成長していくはず。本当はそういう人を地域おこし協力隊で募集するべきじゃないかと思います。

また、先日は広島の竹原という所に行って1000円くらいを払って風車を作ってきました。そこでは風車を作りたかったのではなく、一緒に作る地元のおじいちゃんやおばあちゃんと話す機会を持ちたかったからなんです。長崎県の小値賀という町にもよく行くのですが、そこに行く理由も同様に地元の人と話せるから。そういった機会を通じて地域に魅力を感じていくのですが、今の津和野にはそういった場所はないですよね。日本遺産センターも含めて、津和野にもっとそのような場所を作っていきたいです。

 

ー伝統文化の継承と、人と人を繋げるコミュニティスペース。どちらも津和野らしさを伝えていくために、とても必要なことですよね。今日はペルラキさん自身のバックグラウンドを知ることもできましたし、津和野の今後の観光のあり方について改めて考えさせられた貴重な時間でした。ペルラキさん、今日は本当にありがとうございました!

 

ペルラキさん:こちらこそありがとうございました!

 

 

 

ペルラキさんのお話は、海外の人らしいズバッと鋭く刺さる表現で、町の良いところだけでなく見直すべきところも伝えてくれたのがすごく印象的でした。ペルラキさんは、職務外でも人と津和野を繋げる活動をされており、幾度となく観光のポテンシャルがあると伝えてくれたことは、自身が津和野のことを、心から愛しているからこそなのだと感じました。

 

提示してくれた町の課題は明白です。だからこそ、今すぐにでもできることはたくさんあります。

まずは、この町に関わる一人一人が、ペルラキさん自身のことと、彼が語る言葉を知ってもらいたいと思います。そのうえで、立ち上がる人、協力する人が現れて欲しい。そんなことを強く感じた大切な時間になりました。

 

 

(文・写真/前田健吾)

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