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面白い’’バイブス’’が生まれる可能性を津和野に感じた/厨ファミリアの管理人・齋藤祐介さんにインタビュー

 

こんにちは!ライターの前田健吾です!

 

津和野町が初めて地域おこし協力隊を採用したのが、2012年の4月。

そこから数多くの事業が誕生し、新たな施設や場所も誕生してきました。

その中の一つに、『厨(くりや)ファミリア』(以下、ファミリア)というコミュニティキッチンがあります。

 

元々はユースホステルだった建物を改装して2016年7月にオープン。

レストランスペースで、毎週木曜日に週替わりのシェフがランチを振る舞う『昼餉(ひるげ)』を中心に、不定期で料理教室などのイベントも開催されています。

そしてそのレストランスペースの裏側には、かつて宿泊棟として使われていたスペースがあるのですが、『昼餉』が始まって以降も長らく使用されていませんでした。

 

しかし、その未使用スペースを津和野の新たな宿泊拠点にしようと、改修に立ち上がった一人の男がいます。

 

 

 

横浜の看板屋が津和野へ

 

2017年10月、ファミリアの管理人として津和野町に移住してきた齋藤祐介(さいとう・ゆうすけ)さん。

齋藤さんは今、2019年度中にファミリアを宿泊もできる施設としてオープンさせるために、日夜改修に励んでいます。

 

「生まれは、神奈川県の横浜市。そこで長らく家業である看板制作の仕事をしていたんだけど、沖縄県の西表島や石垣島に住んでいたこともあったし、海外を旅していた時期もあったね。ファミリアに関わることになったのは、妻の久子(ひさこ)がファミリアのメンバーと繋がっていたから。その縁で一度ファミリアの昼餉に訪れた時はたくさん人もいて、当時やっていた夜のイベントもすごく楽しそうな雰囲気だったから、津和野もファミリアもめっちゃ盛り上がってんじゃんって思ってね。それから、ファミリアが常駐の管理人を探していることを伝えられて、津和野に可能性を感じていたし『手伝ってあげよう』という気持ちで来たんだ。だけど、現状は一人で作業していることが多いかな」

 

その後わずか一週間でファミリアを改修するための事業計画を作成した齋藤さんは、資金を得るために島根県の定住財団に計画内容をプレゼンし、見事にトップで採択されました。

現在はファミリアの改修や昼餉の手伝いをするかたわら、妻の久子さんと共に、立ち飲み屋『ひょうたん矢澤』(津和野町高岡通り)の経営やイベントの出店など多岐にわたって活動しています。

 

田舎に来て、生きることのシンプルさに気づいてもらいたい

 

2017年10月に始まり、着々と進んでいる厨ファミリアの改修。

その先に、齋藤さんはどのような未来を考えているのでしょうか?

 

「今やろうとしてるのは、週末のみの営業で、ツアーも込みにした宿泊拠点作りだね。ツアーは津和野だからこそできる体験をコンテンツに考えているんだけど、中でも自信があるのが’’猟師の目線’’でやる山歩き。

禁猟期の猟師さんにアテンドしてもらい、彼らの目線で山歩きをするんだ。地面にある足跡を辿ってみたり、糞やどんぐりの食べかすであったり、そういう普段知ることのない世界を見ながら山の中を歩いていく。そのことを通じて、’’猟師が何を頼りに、どんな目線で山を歩いているか’’ということを体験してもらいたいんだ。田舎だからこそできるこういった体験は、絶対面白いと思うんだよね」

 

 

太皷谷稲成神社やSLといった津和野の観光コンテンツを見て回るのではなく、この地だからこそできる体験に目を向けたツアー。猟師さんとの関係構築や狩猟免許の取得など立ちはだかる壁はありますが、齋藤さんの口ぶりからは『とにかくやっていくぞ!』という意気込みを感じます。

自身がそうしたいと思う背景には、一体何があるのでしょうか?

 

「経済社会のシステムに振り回されている人々を、バカらしく思うからなんだ。昔からの知り合いの中には大企業に勤めているヤツもいるけど、彼らは必要なものや欲しいものを手に入れるために都会で汗水垂らしてお金を稼いでいる。けど田舎だったら、猟や農のテクニックがあれば、生活に必要な物や美味しい物は自分の手で手に入れることができるじゃん。生きるということは複雑に見えてとてもシンプルなこと。ツアーに参加してそのことに気づいてもらいたいし、『猟師になりたい!』って人が現れたら嬉しいよね

 

一人じゃないことが心の支えになっている

 

確かなビジョンと確固たる信念を掲げながら、ファミリアの改修を行なう齋藤さん。時に地域の方が一緒に手伝ってくれることはあるものの、その作業のほとんどを一人で担っています。

 

「来年には宿泊拠点としてオープンしたいんだけど、今は持ち時間と人手が足りないんだ。床の張り替えや内装・外装までやることはいっぱいあるけど、許可関係の手続きもあるし、お店もやっているから、ここの改修だけに時間を割くことは難しい。ガッツリ時間を割いて手伝ってくれる人が、一人でもいるとありがたいんだけどね」

 

一人での改修が工程的にも、モチベーション的にも大変なことは、想像に難くありません。そんな齋藤さんの心の拠り所になっているのは、これまで関わってきた’’人’’の存在でした。

 

「本当に一人でやっていたら、ダラけてしまうこともあったと思うんだ。けど、腹を割って話せる飲み仲間とか地域の若い人とか時々手伝いに来てくれる人もいる。あと、妻の久子もそうだし、横浜や沖縄にいる友人・知人の存在は、本当に大きな心の支えになっている。移住の手助けをしてくれ、オープン予定がズレても変わらず応援してくれている島根県定住財団の方々もそう。ファミリアの改修をやり切って、俺を支えてくれた人たちの恩に報いたいんだ

 

時には、「アッハッハ」と大笑いしながら自身のエピソードを語ることもあれば、とてもシリアスに町の状況を捉えながら、自身の取り組みについて話す一面もある齋藤さん。

かつてファミリアに訪れた時、その人となりを表す印象的な出来事がありました。

 

齋藤さんはその時、地中にある排水管の勾配を変えるという難しい作業に取り組んでいました。私は思わず「一人でこれをやるなんて、めっちゃ大変じゃないですか?」と声をかけたのですが、それに対して彼は笑いながら「面白いことを実現するためだったら、これくらいは全く苦じゃないよ!」とふざけまじりに言いました。

 

自身の中にある確かなビジョンを追い求めて、ハツラツと事を進めていく姿。

自分が面白いと思えることを、いかに人のためになるように、そして、支えてくれている人の恩に報いれるように繋げていくか。

正に筋の通った人という印象を受けました。

 

また、齋藤さんはこんな印象的なことを言ってくれました。

 

「盛り上がっているとこって、最初に一人でめっちゃ頑張っているヤツがいるじゃん。そうして『あそこ、なんか盛り上がってるらしいじゃん!』と感じるヤツがいて、さらに人が集まってくる。そういう面白いバイブス(空気感)を、この場所から作っていきたいんだ!」

 

 

 

今はまだ夢の途中。これからも齋藤さんは、走り続けます。

 

(文/前田健吾、写真/舟山宏輝)

厨ファミリア

 

 

ひょうたん矢澤

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