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海外での販売をしながら、津和野風日本酒を極める地酒「初陣」

津和野町には複数の酒造があり、様々な日本酒が作られています。その中でも、町中のコンビニでも見かけることができ、銘柄を冠したアイスも販売されるなど、知名度の高い古橋酒造の「初陣」。町内外で人気を博している「初陣」が今、世界に向けた販売を開始しています。世界に売り出していく中で、酒造としてどんな想いが込められているのか、古橋酒造の杜氏である古橋貴正(ふるはしたかまさ)さんにお話を聞いてきました。

 

|地元に愛されるお酒づくりを通して、津和野風日本酒の極みへ。

ー「初陣」というお酒について、そして酒造としてどんな方針を掲げているか教えてください。

 「初陣は」、津和野で採れたお米を使っており、津和野の青野山の湧き水を自分で汲みに行き、仕込み水として使っています。青野山の水は、とても柔らかい軟水なので、それが初陣の口当たりの良さ・優しい味にもつながっています。その味わいは、「女酒」とも評されています。そうした地の物を使って、津和野風日本酒を極める、というのが古橋酒造のこだわりとしてあります。また、一番のお客様は津和野町に住む地元の人だと思っているので、地域に愛されるお酒を作っていきたいという想いも持っています。そのスタンスは、今後も変わらずに貫いていきたいです。 

 

ただ、そうは言っても年々人口は減少し続けているのが現状です。昔は地元だけの商売でもなんとかなっていたものも、今はそれだけでは続けていくことが厳しくなってきています。そのため県外・海外を見据えた商品を作っていく必要があると考えています。そういった背景もあり、数年前から海外での展開を視野に入れていました。

 

|「初陣」で、新たな世界へ

ー海外での販売をされているということですが、どのような経緯から始まったのでしょうか

 現在、台湾・ドイツに「初陣」を輸出し、現地の飲料店などで販売していただいています。ドイツの方では一部店舗でも販売されています。

もともと獺祭などの日本酒が海外販売を始めたころから、海外を視野に入れていました。今獺祭は逆輸入のような形で、海外での評価を得てリブランディングをすることで、結果的に国内での価値を高めています。そういった箔をつける・ブランド力をつける、という狙いでやってみたいと考えていました。

そんな折、日本酒販売事業を考えていた台湾の方が、津和野に視察に来られた際に、お声をかけていただいたことがきっかけで始まっています。その時は、一般的に商社に仲介してもらう複雑なやりとりを直接やってほしいとお願いされていたので、ハードルはすごく高いと思っていました。そこではジェトロ(海外展開支援サービス)の方に相談しながら進めて行きました。

ドイツとのやりとりは、ベルリンと津和野町が姉妹都市のため、その縁でいろいろ交流が行われていることがきっかけになります。今回台湾での販売が軌道に乗ったため津和野と交流もあるベルリンでも挑戦をしたいという想いが募り、2017年の9月から販売が始まっています。

ー実際に販売をしてみた感触としてはいかがでしょうか。

 台湾は今日本酒ブームで、様々な日本酒が販売されていたり、イベントも実施されたりしています。特に若者人気が強いため、今後もまだまだ伸びていくと思っています。ドイツの方は市場として伸びるという見解もありますが、日本酒の味自体が浸透しておらずマイナーであることに加えて、販売規定も厳しいようで「まだこれから」という印象です。

 

ー海外での販売を続けていく上で、今後どのような点が課題になってくると思いますか

 一つは、品質向上というものがあります。今ヨーロッパでは、有機野菜が浸透しているため「これは有機米で作られたお酒ですか」と聞かれることがあります。国内とは違った感覚をもっている国もあるので、品質のこだわり、という点はこれからもっと問われてきそうですね。

あとは、いろんなところから「この国で販売してみないか」とお声がけをいただいているのに対応できていない、という現状があります。私は蔵元杜氏として動いているので、酒造りと海外取引の両方をやっています。そうなるとなかなか営業というところまで手が回らず、取引国数を増やすことも難しいです。でも人のつながりによるご縁は大切にしていきたいと思っているので、海外のお客様とは小さくても長く続く関係性を築いていきたいですね。

 

|「初陣」のアイテムとしてのお酒に

ー今後の展望について教えてください

 今世間ではインバウンドという言葉が良く出てきますが、「初陣」が少しでも津和野のPRにも繋がることができたら嬉しいですね。大それたことを考えているわけではないけれど、台湾でも「初陣」をみたことある、とかいうお客さんがいたら嬉しい。

また「初陣」という名前も特徴的であると思います。国内外問わず、何かを始める時の一つのアイテムになればいいかなと。以前、中国人ツアーのお客さんが初陣の味をとても褒めてくれて、彼らと取引も始められたらなと思っています。中国では祝い事の際には、お酒をプレゼントすることが多いそうなんです。そうしたところで、「初陣」を飲んでもらい、初めての祝い酒にして欲しいですね。他にも、例えばお正月とか入学式など門出のイベントの際の定番のお酒になるといいなと思います。

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印象に残っているのは、「世界」という切り口でお話を伺う中で出て来た「地元の山の湧き水を自ら汲みに行く」というエピソードです。世界に目を向けながらも地元を大事にし続けたい、という古橋酒造さんの強い想いをそこから知ることができました。インバウンド需要への対応や人口減少時代に、こだわりや想いを持ちながらどう生き抜くかが問われていると感じました。

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