自然の中で挑戦する子どもを見守る ――「山の日ワクワクキャンプ」に密着
8月11日の山の日。
光明寺(津和野町後田)に夏休み中の子どもたちの声が響き渡った。寺の境内を活用し、”山の日ワクワクキャンプ”という日帰りの自然体験イベントが行われた。
企画したのは、この春から農林課で地域おこし協力隊として活動する森本貴満(もりもと たかみつ)。
「親子で楽しい体験を通じて、身近な自然を感じよう!」をテーマに、津和野小学校の放課後子ども教室“つわぶきワクワク広場”から、23名の子どもと6名の保護者が参加した。
森本は、着任当初に視察した左鎧地区の山の子ども園“うしのしっぽ”で、自然の中で自由に遊ぶ園児たちの生き生きした様子を目の当たりにし、森林教育の価値を強く感じたという。
地域の大人に見守られながら、子どもたちが自然の中でいろんな挑戦や体験ができる場を創りたい。
そんな想いで今回のイベントを企画した。準備期間は約2ヶ月。企画者の森本だけではなく、つわぶきワクワク広場のスタッフや津和野高校の生徒、自然博士など地域の人の温かい力添えによって実現したイベントだった。
当日は、流しそうめんをするための竹のお椀と箸作りや、光明寺の裏の山道を歩いての自然観察、竹を使ったバームクーヘン作りを行った。子どもたちにとってはどれも初めてのことばかり。最初は手元がおぼつかない子もいたが、スタッフ達に見守られながらお椀作りに一生懸命取り組み、「できたよー!」と嬉しそうに見せていた。
山道での自然観察では、自然博士の案内のもと、森林の音に耳を澄ませたり、植物を触ったり、においをかいでみたり……。五感を使って自然を体感することで、たくさんの“発見”があったようだ。バームクーヘン作りでは、火おこしから行い、竹に生地をつけて何層も焼き重ねていく。自分たちで作ったバームクーヘンが美味しかったのか、あっという間に完食した。子どもたちが挑戦する姿を見ていたスタッフからは、「子どもたちは大人が思っているよりもたくましいなと思った」という感想が出た。子どもだけではなく、大人たちにも多くの気づきがあったようだ。
森本は今回の経験をもとに、地域住民と協働で「プレーパーク(冒険遊び場)」を整備していくという。そこでは、工作や生き物観察、泥遊び、秘密基地、鬼ごっこなど、子どもたちが想像力を膨らませ、自ら工夫して自由に遊びを創り出すことができる。
津和野の自然や文化、地域の大人の温かさに触れながら育つことで、決められた道ではなく自分が進みたい道を進めるようになる。その先で、津和野の未来を担うたくましい子が増えていけば嬉しい。
森林教育の場作りを目指す森本の今後に注目だ。
(文/白井博規)