「まち並みの保全は、1軒の空き家から」 『ジミクロ』代表が語る、‘‘0.1”から始める津和野の空き家再生とは
今年の4月に起業した、空き家の掃除・点検を行う会社『ジミクロ』。
その業務は、日本の社会問題の解決に一石を投じるものであるが、長年住んだ愛着のある家が他人に扱われることに、抵抗がある人も少なからずいるだろう。そこで今回は、ニーズからの不安に対する答えや、『ジミクロ』が提供するサービスの詳細について、代表の畔柳さんにお話を伺った。
0→1ではなく、0→0.1ぐらいのつもりで空き家を活用してもらいたい
ー『ジミクロ』が関わった空き家に関して、特に印象に残っていることは何ですか?
畔柳さん:
実際に業務を行う中で、一つの物件が持つ周囲への影響力の大きさを感じましたね。
空き家を掃除・点検していると、隣近所の方から「ここ、どうするの?」などと尋ねられることが結構あります。やっぱり、自分が暮らす地域の変化には誰しもが敏感なんですよね。一件でも空き家に電気がつき始めたら、その周囲の町並みもそれまでとはガラッと変わってくるので、「自分が業務に当たっている物件の影響は、引いては町全体に広がっていく」という意識は大切にしています。
また、空き家に関わる人というのは、現在の所有者さんだけではなく、そのご家族の方や管理を任されている方など様々です。そのため、その後の活用に関する話は簡単にはまとまらず、どうしても決断が長くなってしまう傾向にあります。ただ、私はその点を早急に判断する必要はないと考えています。空き家を少しずつ使用していく中で、自然と活用法が見えてくればいいと思うんです。

ー「空き家を少しずつ使用していく」というのは、具体的にどのようなことを指しているのでしょうか?
畔柳さん:
空き家を掃除してきれいな状態にすると、使用するイメージが以前よりも湧いてくるものです。ですので、すぐに誰かに引き渡すとか、いきなり暮らし始めるとかではなくて、そこで一度夕飯を食べてみたり、飲み会を開催してみたりと、軽く試しながら使用していけばいいと思うんです。
何でもそうですけど、使用頻度が0だったところから、いきなり1に持っていくことは難しい。たまにイベントを行うような0.1から始めるくらいのつもりで、空き家を活用していってもらえたら嬉しいですね。『ジミクロ』のサービスを通して、少しでもそのことに貢献できたらと思います。
ー『ジミクロ』のサービスが入った空き家に対して、近所から何らかのクレームが入ることもあるかと思います。そういった場合、『ジミクロ』としてはどのように対応されるつもりなのでしょうか?
畔柳さん:
まず前提として、『ジミクロ』のサービスは空き家に関するクレームが持ち主の方に来ないようするためでもあります。というのも我々が行っているのは、物件の破損や腐っている箇所に発見したり、インフラの動作確認をしたりと、物件の不備・不具合から生じるクレームを未然に防ぐ作業でもあるんです。
また、空き家に関するクレームを『ジミクロ』が窓口として受け、その内容を持ち主の方にお伝えすることも可能です。詳しくは、弊社の利用規約を参照していただけたらと思います。
ー窓口となって対応してもらえることは、持ち主にとっては非常にありがたいことですね。ところで、畔柳さん自身は空き家の掃除・点検を行う企業で働いた経験が無いと伺っています。そのことについて、ご自身ではどうお考えでしょうか?
畔柳さん:
『ジミクロ』の業務は物件を隅々までピカピカに掃除することではなく、継続して活用していけるように空き家の掃除・点検を行っていくこと。つまるところ、住居として維持していくためのお手伝いでしょうか。その業務に関しては、現役の研究者として建築や空き家に関する相応の知識はありますので、特に支障はありません。仮に技術的に厳しい状況に直面したとしても、津和野にいる空き家の専門家の方々からサポートを受けながら対応することができます。
ですので、企業で働いた経験がないことはマイナスには捉えていません。むしろ、研究者としての知見から業務に当たることやアドバイスをすることも可能なので、プラスの面が大きいように思います。
ー建物の掃除や管理・メンテナンスを行っている業者が他にもたくさんある中、『ジミクロ』がもつ強みはどのようなものなのでしょうか?
畔柳さん:
確かに、大都市圏には空き家掃除を行う業者は色々とあります。しかし、それらが津和野には全く入ってきていないという点は、差別化できているところであり『ジミクロ』が持つ大きな強みなんです。というのも、都市部と比較してみると、津和野の空き家には築年数がかなり長いものが多く含まれています。その中には、建物の一部が明治時代に作られているなど、他社が想定できていない、都市ではあまり見られない状態の家屋もあります。その点においては、津和野で活動してきた私の経験と、空き家の専門家との繋がりを駆使することで、臨機応変に対応することができるんです。
また、組織を介することなく、個人として柔軟に動けることも一つ強みであると考えています。メニューには記載されていない箇所の修理・点検、写真撮影や近所への挨拶回りなど、お客様からの要望に対してできる限りの対応はさせていただくつもりです。
確かに、今はまだ空き家のスペシャリストではないかもしれません。けれども、空き家のジェネラリストとして、空き家に関する知識を持った人とお客様を繋げる役割を果たすことができます。そんな自分だからこそ実現できる『ジミクロ』のサービスを、とことん突き詰めていきたいと思います。
細かな疑問についても、自信をもって理路整然と答える姿が印象的であった畔柳さん。‘‘地道に、ミクロに”というコンセプト通り、実直に仕事を行ってくれる人柄が伝わってくる。
ところで、その人柄や仕事ぶりというのは実際はどのようなものなのだろうか。
そこで、先日ジミクロのサービスを受けたという方にお話を伺った。
ージミクロのサービスを受けた方の感想
畔柳さんとは、およそ5年前からの付き合いになります。
当時は津和野に若者がいる状況がとても珍しく、畔柳さんのように都会から来られた若い方が苦労するところもあったと思うのですが、そんな中でも畔柳さんは、その親しみやすい人柄から、町内の誰とでも仲良くなるような存在でした。今回空き家掃除をお願いしたのも、「仕事を任せてみたい」と思えるような、目の前の相手に真摯に向き合う姿勢と仕事に対しての実直さを信頼してのことです。
実際に物件の掃除・点検から庭の草刈りまでお願いしたところ、以前よりもずっと綺麗になっていてビックリしています。また、今回は特別に柱や壁の状態も見てもらったのですが、その説明もわかりやすく丁寧にしてもらって、その仕事振りにはとても満足しました。
これまでに無い新たな領域でジミクロをスタートさせた畔柳さんの今後に期待しています。
津和野には現在およそ500件の空き家があり、今後はさらに増えていくことが予想される。そんな状況の中でも、空き家の掃除・点検業者として津和野に参入しているのは、『ジミクロ』だけであり、町内の空き家専門家や空き家の研究者などとの繋がりを駆使することができるのも『ジミクロ』だけだ。
津和野に空き家を所有しているが、遠方に住んでいて手入れができない方。
空き家が活用できる状態なのかどうか見てもらい方。
ぜひ一度『ジミクロ』のサービスを受けられてみてはいかがだろうか?
(文/写真 前田健吾)
ジミクロのサービス一覧
空き家点検プランー¥10,000(月額)
雨漏り、漏水チェック、管理看板の設置と近隣からの苦情受付、各蛇口の通水、郵便物のチェックと転送手配、窓・収納扉の開放(60分)、敷地境界を超える庭木のチェック、チェックの結果と現状の写真を報告書として送付(メール又は郵送)
空き部屋掃除プランー¥10,000(1回)
ホコリちり取、室内の荷運び、床掃除・モップかけ、棚等の雑巾がけ
敷地点検・草刈りプランー¥5,000(月額)
年3回(6、8、11月)の草刈り、管理看板の設置と近隣からの苦情受付、建物周りのゴミ取り、敷地境界を超える庭木のチェック、草刈り前後や現状の写真を報告書として送付(メール又は郵送)
お墓掃除プランー¥7,000(1回)
墓石周りのゴミ取り・草取り、新しい花・お線香のお供え(別途お花代が必要です)、墓石周りの掃き掃除、墓石の水洗い掃除、掃除前後の写真を報告書として送付(メール又は郵送)
※本記事で取り上げた物件では、特別プランとして、「床下の状態をチェック」「家の傾き具合」「壁の状態」の業務も行っております。詳しい内容は『ジミクロ』にまでお問い合わせください。
外部サイト:ふるさとチョイス「【数量限定】空き家点検サービスお試しチケット1年券」
代表者:畔柳 知宏
電話番号:050-3692-2396
メール:jimikuro96@gmail.com
ウェブサイト:jmkr2396.tumblr.com
事業所:島根県鹿足郡津和野町後田ロ60-43
設立:2017年4月
主な事業内容
1.空き家点検・掃除サービス
2.空き家活用コンサルティング
畔柳 知宏
2012.4 津和野町営業課 町長付(地域おこし協力隊)
2015.3 東京工業大学 人間環境システム専攻修士課程修了
2015.4 建築設計事務所 勤務
2016.4 東京工業大学 環境・社会理工学院建築学系 博士課程在籍
2017.4 ジミクロ創業