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「離れてもまた戻ってきたい」第11回・夏休みサブミ宿泊体験に参加してみた【7/28(金)〜7/30(日)】

 

津和野町の東の端に位置する左鐙(さぶみ)地区。

その東部には島根県最高峰の山・安蔵寺山(あぞうじやま)や日本一の清流・高津川が位置し、豊かな自然の元に育まれる鮎やわさびといった生産品が有名だ。

また左鐙という珍しい名前は、壇ノ浦の戦いに敗れた平家の落武者がこの地で左の鐙(馬に乗る際に足を踏みかける馬具)を落としたことに由来する。

 

この夏、約1年半前に閉校になった左鐙小学校にて、第11回目となる夏休みサブミ宿泊体験が開催された。主催者の負担が大きいことから、昨年の開催を最後にしたいという声もあった。それでも、子ども達や保護者から開催を強く望む声が集まり、運営体制の変更も経て今年も開催。

 

そんな今回は、参加した子どもが楽しむことはもちろん、本気で子どもたちに向き合う熱いスタッフの姿があった。

 

 

 

 

 

離れてもまた戻ってきたい

 

7月28日〜30日にかけての3日間で宿泊体験に参加した子どもの数は25人ほど。この行事に関わった大人の数は、子どものそれを優に超える。スタッフの中には、地域住民や保護者たちだけでなく、町外からボランティアとして駆けつけた人もいる。

 

以前にもスタッフとして参加したある女子大生は、わざわざ鳥取から駆けつけたのだそう。かつて左鐙に住んでいた経験がある彼女は、左鐙を離れた今でも地域への思い入れは強いのだという。

 

「閉校になった左鐙小学校に、4年ほど在籍していた時期がありました。引っ越してからも左鐙への愛着はすごくあって、離れてもまた戻ってきたなぁという気持ちになるんです。今でもここに来るとすごく落ち着くんですよね」

 

左鐙で過ごした時間はそれほど長くはなかったものの、思い出を振り返るその口調は、まるで自身の故郷について語っているかのよう。

 

 

 

 

背中で語る大人の姿

 

この宿泊体験では、初日の夜にいきなり3日分の食事の材料が各グループに渡される。これをグループ内で相談しながら、毎食のメニューを決めていくのだ。

 

今回が初参加の筆者が想定していたのは、子ども達の自発的な行動を周りの大人が見守るというもの。しかし実際の現場は、もちろん子ども達中心ではあるが、率先して野菜を切ったり飯盒炊さんをしたりと、子ども以上に周囲の大人がドシドシ行動していく。

 

その姿を見て、子ども達も自分がやらなければいけないことに気づき、隙間を埋めるように自ら行動する。単純に大人/子どもと割り切れない人間関係の中で行動していくからこそ、各々が自分の役割を見出していくのだ。

 

自身の子どもと一緒に、今回まで3回ほど参加している保護者がいた。リフレッシュも兼ねて、横浜から参加しているという。

 

「この宿泊体験に参加する前後で、子どもの様子が違ってくるんです。宿泊体験から帰ってきた後は、以前よりも優しく接してくれるし、とても素直に自分の気持ちを表現するようになるんです。それは地域住民の方との関わりや、3日間過ごす中でお互いのことを理解できるからこそ、生まれてくる変化なのだと思います」

 

 

 

 

 

それが本当に子ども達のためになるのか

 

左鐙出身の人たちは長い時間を共に過ごしてきたからか、本当に年齢の垣根がなく仲が良い。だからこそ時として、正直な思いが熱くぶつかり合うこともある。それは宿泊体験中、子ども達が寝静まった頃に起こった。

 

「なんでお前は、子ども達に『それをやったらアカン』って言わんかったん?口に出して言わなわからんじゃろ」

「それは言わんくても理解してくれると思ったし、周りの雰囲気もあったから言わんかった。その場で、子どもたちにわかってもらえるように伝えるのって難しいんよ」

 

普段は保育に関わりのないスタッフであろうと、子どもへの接し方に関しては、しっかりとお互いの思いをぶつけ合う。見守り保育だけでは、子どもたちの主体性は育まれない。主体的な行動をしてもらうためには、時には大人が動かなければいけないし、指示を出すことや手を貸さなければいけない場面もある。『それが本当に子ども達のためになるのか』各々のスタッフが考えながら動いているのだ。

 

 

 

川遊びやキャンプファイヤー、様々なレクリエーションの企画を終えた宿泊体験最終日、スタッフとして参加していた一人一人が自身の感想を述べていく。

 

「わたしは、毎年参加する度に『今までで‘‘一番”おもしろい宿泊体験にしよう』と思って参加しています。そして、今回も今までで一番面白い宿泊体験にすることができました!」

「前は子ども達の側にいたのですが、今回スタッフとして参加してみると、『やっぱり子どもってかわいいな』と思いました(笑)」

 

 

中高生であっても、スタッフとして子どものために宿泊体験を良いものにしていこうという姿勢。大人になって子ども達の世話をしていくという流れが、地域への愛着を生んでいくのだろう。町外から参加したスタッフは下のように語っている。

 

「印象に残っているのは、左鐙の中高生がすぐにでもパパ・ママになれるんじゃないかと思うほど、子ども達のことを考えて主体的に行動していたことです」

「左鐙の子ども達が本当に地域の人たちから愛されている、ということがヒシヒシと伝わってきました。地域全体の愛を強く感じられました」

 

 

 

「子どもが育つ環境としての左鐙の素晴らしさ」を知ってもらいたい

 

左鐙の特徴は、独自の大自然と地域住民との関わり、何より子ども達にきちんと向き合う姿勢を持った大人がいることだ。

この宿泊体験の発起人の一人・京村さんはこう語る。

 

「この宿泊体験は、『子どもが育つ環境としての左鐙の素晴らしさ』を対外的に示すことで、小学校を存続させるべく始まった取り組みなんです。

 

小学生と大人が役割が分断されることなく共に時間を過ごすことで、上下の関係を意識しないコミュニケーションを学べるし、ピクニックや川遊び、釣りといった左鐙の自然を存分に生かした体験を積んでいくことによって、地域への愛着はますます強くなっていく。そうした体験を経て育っていった中高生や大学生が、地域の行事にボランティアとして戻ってくるようになる。これは、この左鐙というフィールドがあってこそ、成し得ることだと考えています。

 

 

小学校が失くなった今でも、左鐙は目の前の子ども達のために一生懸命になっていく。そこだけはブレることなく、これからも活動していきます」

 

 

運営側の負担の大きいことから昨年度の第10回で終わらせたいという声もあった宿泊体験。だが、実行委員長の交代や過去に参加した子ども達から継続を願う声があるなどして、今回の宿泊体験を開催に至った

 

「イベント事全てに言えることですが、1回だけならまだしも、3回、4回とそれを続けていくことはものすごくエネルギーが必要だし、そこには保護者やスタッフを始めとする周囲のサポートも不可欠なんです。清水さんを始めとする地域の若手や、外部の人たちに地域で駆け回ってもらいたいですね」

(文/前田健吾)

 

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