ツワノシゴト模様 島根県津和野町発信、生き方を探すローカルメディア

「シンプルだからこそ、ごまかすことができない」”あんこ”に込められた和菓子職人・三浦晃三の全て(後編)【和菓子職人×マイスター】

2017年度のツワノシゴト模様の第1回で取り上げるマイスターは、和菓子屋・三松堂の職人「三浦晃三(みうら・こうぞう)」さん。

今回は、三浦さんのこれまでのキャリア、そして今後の展望についての熱い思いを発信していく。

 

前編はコチラ(”あんこ”に込められた和菓子職人・三浦晃三の全て(前編)【和菓子職人×マイスター】)

 

後編:小豆本来の風味が引き立つ”あんこ”を作り上げる

 

 

 

 

フランスパンに切れ目を入れることからスタートした職人としてのキャリア

 

和菓子作りに携わってからわずか3年ほどであるにもかかわらず、今や三松堂の中でも一目置かれている三浦さん。モノづくりに対して見せる徹底的なこだわりは、文字通りのマイスターだ。

そんな彼のマイスターとしての原体験。それは、子供時代に味わった”母の味”にあった。

 

「生まれは山口県阿東町(現・山口市)で、それほど裕福な家庭ではありませんでした。そんなうちの母が作ってくれるお菓子と言ったら、小麦に砂糖と卵を混ぜて作ったドーナツのような物。そのお菓子は簡単に作れる割にはとても美味しく、かつ洒落た見た目になるようにとリボンを模して作られていて、子供ながらに感動していたのを覚えています。生来、モノづくりが好きだったんでしょうね。そのお菓子を再現しようと、自分でもちょこちょこと作っていました。

親は共働きで年が離れた兄二人も帰りも遅かったので、学生時代は自分が家で料理を作ることが多かったです。当時はそんなに大した物を作っていなかったのですが、それでも「美味しい」と言って食べてもらえることはたまらなく嬉しかった。今でもお客様や目の前の人に喜んでもらえることが、職人として仕事に励む上での大きなモチベーションになっています」

 

 

小さい頃から料理やお菓子作りをしていたという三浦さん。今は三松堂の職人として日々の和菓子作りに勤しんでるが、自身の職人としてのキャリアは少し意外な現場からスタートした。

 

「小さい頃からモノづくりが好きだったし、職人への憧れもありました。高校を卒業してから大阪の調理師学校に進学した後、それなりに名前が知られているパン屋に就職しました。そこではフランスパン課に配属となり、パンにクープという切れ目を入れていくという仕事をしていたんです。あれが意外と難しくて……、切れ目の入れ方によって歪んで割れてしまったり、生地のフワフワ感が変わったりと、ただ切れ目を入れるだけなのに、こんなにも結果が変わってしまう。モノづくりのシンプルな工程の中にある奥深さを知りましたね。

元々色んなモノづくりを経験したかったので、パン屋の他にも色んな食品関係の仕事に携わってきました。ちなみに三松堂に入社する前までは、津和野から40分ほどのところにあるドーナツ屋で働いていたんですよ。和菓子作りの経験はまだまだ浅いですが、だからこそ常識に捉われることなく、他の職人とは違ったチャレンジができているのだと思います」

 

 

苦労も味わいながら、自力で職人としての道を切り開いてきた三浦さん。

そんな彼がバイブルとして持っているのがこちらの本である。

 

「パン屋に勤めていた時に自分で稼いだお金で初めて購入した本が、こちら『ケーキ作りは基本が決めて』と『お菓子百貨』です。一つは1990年出版なんて…何だか歴史を感じますね(笑)。昔はこれを見て洋菓子ばかり作っていました。和菓子の中で唯一作ったことがあるのが『栗饅頭(くりまんじゅう)』。好きな人からのリクエストで作ってあげたことがあったんですけど、当時はあんまり上手くできなかったですね。これらは今までずっと読み続けている本で、自分にとっての”先生”みたいな存在です」

 

 

 

豆本来の風味が引き立つあんこを世に

 

そんな三浦さんの不断の努力に誰よりも応えていたのは、三松堂の小林社長であり相棒の阿部さんであった。

 

「社長から《餡の日》の商品作りを任された時は、自分への信頼が感じられ、ありがたい気持ちでいっぱいになりました。それに何とか応えようと、その後は試作品を作っては阿部さんからフィードバックをもらう、ということの連続でした。それはもう、どれだけ突き返されたことか(笑)。社長が試食をする前日まで付き合ってもらって、ダメ出しを受けては解決策を出していく、ということを繰り返していったんです。そして迎えた当日、社長がつぶ餡おはぎを食べたら……、何だかめっちゃ笑ってくれたんですよ!あの瞬間といったら、もうすこぶる嬉しかったですね」

 

 

 

自分の理想を追い求めて、自分の作品に徹底的に凝り続ける姿勢には、自然と結果も付いてくる。小林社長の大笑いの理由は、察するに、自分の期待値を遥かに上回る物が出てきたからか。

三浦さん自身、つぶ餡おはぎは最初は形や見た目があまり良くなかったと言っていたが、それも自分の理想像がどこまでも高いところにあるからなのだろう。また、三松堂という環境も、三浦さんの力を発揮することに大きく影響しているようだ。

 

「三松堂という職場は、本当に居心地が良いですよ。

 

自由に色んな商品を作らせてもらえるという点では、社長の存在がめちゃくちゃ大きいです。社員になったら最初に研修があるのですが、そこでは自分が作りたい物を作って、社長や阿部さんに評価してもらう機会が設けられています。普通、いきなり入った人間が新商品を作らせてもらえるなんてことは、ありえないですよ。しかも、きちんとしたフィードバックまでもらえることができて……。そのような機会や『餡の日』での新商品開発など、今までたくさんのチャンスをいただくことができました。

 

阿部さんにもすごく助けてもらいました。試作品への率直なフィードバックはもちろん、『かさぎ屋』や洋菓子屋、ケーキ屋など様々な所に連れて行ってくれたりと、本当にありがたい限りです。たくさんの異業種の人と繋げてもらい、厨房でお菓子作りの現場を見せてもらうこともありましたし、普段とは違った角度から自分の和菓子作りにも役立つ勉強を色々とさせてもらいました」

 

 

『お客様にひとときの幸せを提供する』という理念のためならどこまでもストイックに良い物を作ろうとする三松堂の姿勢が、三浦さん自身の職人気質な生き様と上手くマッチしているようだ。

そんな三浦さんが思い描く理想とは如何なるものなのか。

 

「どんな世界においても100人いたら100通りの作り方があると思うんですけど、その中でも自分にしか作れないあんこを作れるようになりたいですね。

 

目指すあんこは、とにかく“小豆の風味が引き立っている”モノ。というのも、小豆って本来は豆としての風味があるはずなんですけど、一般に売られているあんこはただ甘いだけ。そうじゃなくて、小豆の風味を引き立たせて、豆を食べていることを感じてもらえるようなあんこを作りたいんです。源氏巻でも試しているんですけど、これが中々難しい……。理想を作り上げるべく、源氏巻が出勤後の朝食みたいになっています(笑)」

 

 

何度突き返されても決してへこたれることなく、理想を追い求めて自分の答えを出し続ける。三浦さんは三松堂で、これからも誰しもが納得のいく商品を作り上げていくのだろう。

 

「『孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきた すごいPDCA』っていう本に最近ハマっているんですよ。内容はPDCAサイクルについてなんです。計画をして、実行に移し、受ける評価を元にして、改善のための行動をする。その動き方が、何だかめっちゃ三松堂っぽいなって!」

 

 

 

 

ー三松堂本店店長・阿部さん談ー

 

三松堂では『お客様にひとときの幸せを提供する』ことを念頭に全ての行動をしています。だからこそ、年齢や肩書きなどに捉われることなく、チャンスを与え続ける。また、商品を店頭に出すことにおいては、簡単に首を縦に振ることもない。相手が出した物に対して僕らがフィードバックをし、それにまた解決策を出してもらう。それを何度も何度も繰り返すことによって、本当に良い物が出来上がるんです。

 

実は三浦さんとは意見の食い違いから、距離を置いていた時期もありました。それでも、やっぱり三浦さんの方がお兄さんじゃけぇ、向こうから僕に近づいてきてくれて、そうなるともうパートナーとか親友とかそういう次元ではないですね。何だかもう、10年以上は一緒にいるような感覚です(笑)。『これからも一緒に、三松堂から津和野を盛り上げていこう』という気持ちです

 

 

かつては大嫌いだった”あんこ”と徹底的に向き合い続ける和菓子職人・三浦さん。自らが理想として掲げている小豆本来の風味が引き立つ”あんこ”を作るべく、彼の挑戦はこれからも続いていく。

 

(文・写真/前田健吾)

 

三浦晃三(みうら・こうぞう)

 

職業:和菓子職人

生年月日:昭和47年1月22日

血液型:B型

出身:山口県阿東町

 

 

ローカルニッポンに掲載された三松堂社長・小林智太郎さんのインタビュー記事はコチラ

 

 

三松堂本店店長・阿部さんの過去記事はコチラ

 

三松堂の和菓子は、『津和野町ふるさと納税制度』からもお求めいただくことができます。詳しくは外部サイトまで。

外部サイト:ふるさとチョイス「津和野名物「源氏巻」と「ふくしろ」を含む和菓子詰合せセット」

 

 

《餡の日》は毎月第3日曜日に開催されます。詳細情報につきましては、三松堂にご確認ください。

 

和菓子処 三松堂 本店

 

営業時間:8:00~18:00

定休日:なし

駐車場:7台

TEL:0856-72-0174

 

島根県津和野町発信、生き方を探すローカルメディア

Copyright© ツワノシゴト模様 , 2017 All Rights Reserved.