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“レシピの無い和菓子”『こいの里』とは? 若店長が職人と二人三脚の和菓子づくりに挑む (和菓子処 三松堂 阿部龍太郎さんインタビュー/前編)

60年以上続く和菓子屋の、前身はまさかの”パン屋”(?!)

和菓子屋『三松堂』。

和菓子のラインナップは、秘伝の羊羹『こいの里(さと)』を筆頭に、抹茶を練り込んだ餡が特徴的な『鴎外』、大粒のいちごを贅沢に使った季節限定の『いちご大福』など。一品一品こだわった和菓子の数々には町内外問わずファンも多く、現在3店舗の系列店を構えている。

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ここが、三松堂本店である。町内唯一の高校・津和野高校から徒歩10分の場所にそれはある。店内には色とりどりの和菓子が並べられているショウウィンドウがあり、装飾品は落ち着いた雰囲気を醸し出している。

「お客様がゆっくりとくつろいでいただけるための、工夫をこらしています」

そう語るのは三松堂本店で店長を務めている、阿部龍太郎さんだ。

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「ゆっくりとくつろいで、お茶を飲みながら和菓子を味わって欲しい。そのために休憩スペースも用意しているんです。本店は津和野高校の通学路にあるので、帰り道によっていただいて、学生のお客様にとって憩いの場になってくれたら嬉しいですね」

阿部さんは生まれも育ちも津和野町。津和野は城下町であることからたくさんの和菓子屋があり、小さい頃から和菓子に触れ合う機会も多かったという。

「おじいちゃん子だったから、若い子たちより大人の方と触れ合う機会の方が多かったんです。そのためか色々な和菓子が常に身近にありましたね。僕みたいに若い頃から和菓子に親しんでいれば、その後も長くファンになってくれると思うんですよ。ですので三松堂では高校生割引も実施しています。業界のこれからを考えると、幅広い層のファンを作っていかないといけないですからね」

時代の流れを先取りし、経営に活かしている三松堂。そんな和菓子屋のルーツは意外なものだった。

「三松堂は昭和26年に創業したのですが、当初はパンを製造・販売していたんです。そこから創業者である小林萬吉(こばやし・まんきち)氏の提案により、自社オリジナルの和菓子を作ることになりました。彼はかつて言いました。『お客様に、ひとときの幸せを提供する』。その言葉は、三松堂の経営理念になっています。そんな理念のもと作られた和菓子は、津和野出身の文豪・森鴎外のご子息の方にも認められ、彼の名を冠した『鴎外』という和菓子を販売することになったのです」

“一子相伝”の和菓子、『こいの里』

そんな三松堂の和菓子の中でも1番の人気商品が、昭和40年から製造が続けられている『こいの里』だ。DSC_0651「サクッとした歯触りを楽しめる、珍しい羊羹です。原料は練り羊羹と一緒ですが、独自の製法で作成しているため、全く違った食感となっています」

こいの里を一口いただいてみると、確かに食感は羊羹よりも軽やかだ。舌で転がしてるうちにさらりと溶けて、品の良い甘さが口の中に残る。

「こいの里は三松堂秘伝の和菓子なんです。“一子相伝”と言って、口伝えで伝承するからレシピが存在しない。もっともレシピや機械を用いたとしても、鯉の里は作れないかもしれません。職人は11人いるのですが、その中でもたった1人だけしか製法を知らないんですよ」

レシピも無く、機械でも作ることができないとは、一体どういうことだろうか。

「こいの里は、職人の技術や感覚によるものが大きいんです。気温や湿度によって和菓子の出来が左右されるので、普段通り作ったとしても形にならない場合がある。微妙な質感や食感を出すためには、知識や理性じゃどうにもならない、カンやコツを磨いていくしか無いんです。かく言う僕も口だけで、もちろん作れませんが(笑)」

DSC_0670阿部さんがお菓子のことを語る時には、まるで愛する友人や家族のことを語るような口ぶりで話してくれる。その背景には職人のこだわりを伝えんとする、販売人としての“ある想い”があった。

「自費で視察に京都まで」職人と二人三脚で歩む商品開発

阿部さんの主な仕事は和菓子の販売だが、自身で生産現場に足を運び、和菓子の新メニュー開発もしているという。

「実際に現場を見ると、言葉に説得力が生まれ、お客様の心を動かすような話ができるようになるんです。例えば「北海道の小豆もピンキリで、美味しさに差があります。その中でも三松堂が仕入れている“芽室(めむろ)の小豆”は、品質管理が行き届いていて、地元農家の方が認めるほどです」なんて説明、現場で直接話を聞かないと知る事ができません。ですので職人と頻繁にコミュニケーションを図り、彼らの想いを聞くことを大切にしています」DSC_0715目立たないところでも積極的に動き、仕事に励む阿部さん。新商品の開発にあたっては、自費で京都のお茶屋を何度も訪ね歩いたという。

「京都は和菓子を出すお店がたくさんがあるので、様々な刺激を受けることができます。和菓子の製法やそのお店が持つ信念に至るまで、とても良い勉強になるんですよ。最近では、京都で学んだ“小豆本来のうま味”を感じられる和菓子づくりの企画を進めています」

しかし新商品企画を進めることは、苦労も多いそうだ。

「新商品のアイデア自体はいくらでも浮かぶのですが、それを実際に形にするのが難しいんです。作っている最中に目移りすると、どんどん脱線してしまい、何を作っているのかわからなくなる時もあります。

そうならないためにも、“引き算”をするレシピ作りを心がけています。商品開発にあたっては、まずコストを度外視して自分たちが一番旨いと思うものを作る。そこからお求めやすい形でご提供できるよう、“引き算”をしていくんです。どこを控えてどこを維持するか、卵や小麦を変えてみようとか、職人と多くの議論を交わす。

もちろん時には、ぶつかり合うときもあります。しかし信頼してるからこそ、お互い遠慮せずに意見を言い合える。まさにパートナーの関係ですね」

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“お客様の心を動かす和菓子”とは何かを常日頃から考え、職人と二人三脚で現場を歩き回っているという阿部さん。

そんな彼でも、数年前まで「働くことが嫌で、会社を辞めようかとも思った」と語る。

果たしてその理由とは。そして、そんな彼の価値観を変えたものとは。

後編はコチラ『和菓子処 三松堂 阿部龍太郎さんインタビュー/後編』

(文/宮武優太郎)

今回紹介させていただいた三松堂の「鴎外」と「鯉の里」は、『津和野町ふるさと納税制度』からお求めいただくことができます。詳しくは外部サイトまで。

外部サイト:ふるさとチョイス「津和野名物「源氏巻」と「ふくしろ」を含む和菓子詰合せセット」

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和菓子処 三松堂 本店

営業時間:8:00~18:00
定休日:なし
駐車場:7台
TEL:0856-72-0174

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