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【密着】「屋台を通して人をハッピーに!」22歳女子”あまちゃん”が作った屋台に編集部が特別潜入!

 

 

ある家の庭の一角に、それはあった。

小さなリヤカーの上に設けられた、細長い煙突のような小屋。

羽のような屋根が開き、時折談笑する声が外に漏れてくる。

リヤカーに小屋が乗ったそれ、昔懐かしの”屋台”である。この屋台は、都会に比べて娯楽の少ない地域にて屋台を通して娯楽を増やし、人をハッピーにしていきたい、と語る一人の女性によって始められたものだった。

 

小林愛真美(こばやし・あまみ)。津和野町地域おこし協力隊として、約2年と半年をこの津和野町で過ごしてきた。なお、彼女は私の友人の一人であるので、ここでは普段からの呼び名”あまちゃん”と呼ばせてもらう。

埼玉県出身のあまちゃんは、単身津和野に移住してから、自分は一体何がしたいのかということを自問自答した挙句、自分の生きる道として屋台の開店を決意した。

彼女の屋台は近々本格的にオープンする予定で、今回は身内だけをお客として招いた試運転として開催される。

本記事で、そんな彼女の屋台の雰囲気を少しでも掴んでいただけたらと思う。

 

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みんなで作り上げていく屋台

2月28日火曜日の午後7時30分。あまちゃん屋台がいよいよ始まる。

 

そばで彼女をずっと見てきた私としては、ついに始まるのか!と少し感慨深い気持ちでいる。半年弱の準備期間を経てきた本人の感慨は、きっと私以上のものなのだろう。

屋台の中には、私の同僚や私の元を訪れてきた東京在住の友人など数人が丸イスに腰掛けている。

足元が少し寒い。日中は暖かくなってきたが、まだまだ朝晩が冷え込む季節が続いている。

だが、机に置いてあるランタンの光を見ていると、心無しか少し暖かく感じる。単純にライトの種類だけでも、感じる暖かさや空間の雰囲気は全く違ったものになるのだと思う。
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そんなことは元より、私はとにかくおでんを食べられるのが楽しみでたまらない。

 

「もしかしたら出汁が足りないかもしんない」

そう言ってあまちゃんはおどける。いや、おどけるのではなく本当に足りないのだと思う。家にカツオやいりこなどがあるので、事前に出汁を取って置き、後でつぎ足したらどうかと提案すると、

「出汁は昆布からとってるし、いりこも入れると臭くなっちゃうんだよねー。だから、とりあえずこのまま行くわ」とあまちゃんは言う。自分で何度も作ってみたからこそのこだわりがそこにはある。

 

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今回の屋台は、あまちゃんがほぼ一人で準備してくれた。

そして、彼女が一人でグツグツと煮たおでんが、美味しい香りを我々に振りまいてくる。ただそれを眺めているだけで、お腹がグーっとなってきそうだ。

蓋を開けると、出汁が蒸発した湯気が立ち上る。香りが屋台の中を舞うように広がってくる。

さてさて、鍋の中はどうなっているのか。

 

四角の鍋の中は9つに区切られている。大根、じゃがいも、餅巾着、糸こんにゃく、はんぺん、竹輪、…ヨダレを拭わざるえない定番のおでんのメニューが、区画ごとに煮えられていた。

 

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「嫌いなもんとかない?わたしが勝手によそうね〜」

そう言って、あまちゃんは出汁に少し浮くほどの具材が盛られたお皿と、ラガービールが注がれたコップを我々に渡してくれた。

 

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まずは乾杯をし、ゴクゴクとビールを口に注いでいく。

よく冷えたビールは、喉を鳴らし、身体の芯まで潤していく。おでんを食べる前の下準備が整った。

 

おでんを食してみる。

出汁が食材に染み渡っており、じゃがいもや大根などは、口の中に放り込むとホロホロと崩れていく。あまちゃんが事前に下茹でをしていたからである。

 

餅巾着の餅は、市販のものではなく、実際に町人の方がついてくれたものだという。それだからか、粘り気が強く、噛めば噛むほど口内に甘みが広がってくる。そして、巾着を結んでいる紐は何とパスタの麺である。あまちゃんの創意工夫が垣間見られ、かつ手作り感が見えることに、何だか懐かしい温かい感じを覚える。

 

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昆布から取られた出汁は、フワッとする香りを漂わせながら、胃袋の中に流れ込んでいく。

ただ、塩っ辛いものが大好きな酒飲み体質の私的には、もう少し味が濃い方がありがたい。

 

「今回は最初だから味を薄めに作ったけど、基本的にお酒飲みたい人が来るから、もう少し濃くてもいいかもしんないね」と、あまちゃんは言う。

 

私は自分でそんなことを言ったそばから、お構いなしにおでんを口に放り込んでいく。みんな夢中で食べ進めたので、会話は自然と無くなっていく。。。

 

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それほど、美味しいということなのである。

 

食が進むにつれて、あまちゃんからも、またお客の方からも屋台に対するアイデアが飛び出してくる。

 

「お客からいただいた名刺とか壁に貼っていきたいね」

「チェキで撮った写真を、壁にピンで留めておくのも面白いんじゃね?」

 

こういった意見が飛び出してくるのも、我々があまちゃんの屋台に大きな可能性を感じているからだ。彼女は、実際に屋台を動かしながら、お客から出た意見をできるだけ取り入れて運営していくつもりだという。そうやって、彼女だけでなく我々や他のお客と一緒に屋台が作り上げられていくというのも面白い。
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人の温もりを求めて

 

狭い空間を暖簾で囲われているからか、自然と心の距離感が近づいているように感じる。まあ、そこは身内だけでやっているということもあるのだが、あまちゃんのキャラクターだからこそ上手く会話も回せるし、顔見知りではないお客同士でも、自然と会話が弾みそうだ。

 

おでんの締めは、うどん。あまちゃんが冷凍うどんを四角の鍋にぶち込んでいく。

 

「冷凍うどんってめっちゃ美味いよねー」あまちゃんは言う。実は私もそう思っていた。すごいコシが出るし、そんなに煮る時間もかからない。カップラーメンなんかよりもポテンシャルは高いと思う。そんな冷凍うどんは、おでんの出汁と絶妙に絡み合う。これならどれだけでも食べられそうだ。

 

最後に電子レンジではなく鍋で煮た、津和野が誇る日本酒『初陣』の熱燗を作ってくれた。

 

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「熱燗じゃねぇ。ぬる燗だ、ぬる燗!」と彼女は言って、我々に注いでくれる。

 

ぬる燗か、まあ許す。

この時ふと思ったのだが、私は美味しい熱燗を求めているのではなく、手作り感というか、人の温度感を求めているのかもしれない。冷凍食品や化学調味料などのレベルが上がってきている昨今、ある一定レベルの味が美味しい料理を作るだけなら、人の手をそれほど必要としなくなっている。だからこそ、あまちゃんが実際に熱燗を火にかけている姿はワクワクするし、おでんをよそってくれるだけでも嬉しかった。やっぱり温度感、つまり人の温もりが感じられるものこそ何よりも美味しいのだろう。そして、この日飲んだぬる燗はめちゃくちゃ美味しかった。(この後、2杯目の熱燗を作ったらかなり上手くいき、丁度いい熱さの熱燗が出てきた。もちろん、これもまた美味かった)

 

気づけば、まだまだ外が寒い季節にもかかわらず、3時間以上談笑していた。もちろん、アルコールを飲んでいたことも相まって足元は相当寒かったが、もう少しこの空間にいたいという思いが勝っていた。

 

「別の人が店主をやって、あまちゃんがお客をやってみなよ」私の友人は言う。

 

あまちゃんは大いに同意し、私から順番にあまちゃんがいたポジションにつく。

店主の位置に立つと狭く感じる。そして、みんなの視線を一線に集めているからか、ひどく緊張した。その理由は、レストランでも居酒屋でもない、他ならぬ屋台だからこそ起こることなのだろう。ご飯を食べにくるのではなく、料理を作ったりよそったりする姿、店主や他の客との会話を求めて、お客はやってくるのだろう。そんな環境であるからこそ、あまちゃんの個性が際立ってくる。

 

「次はちゃんとした形で、誰かに店主やってもらって、わたしがお客やってみるわ(笑)」

 

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ただのおままごとではなく、あまちゃんが自分を客観的に見るためである。あまちゃんのひたむきに頑張っている姿を見ているとやっぱり協力したくなるし、私以外の方もそう思ってくれるだろう。

 

人伝に萩市の家具職人を訪ねて、津和野町と何度も行き来をし、1月下旬に10日間篭り続けたこともあった末に作り上げられたあまちゃんの屋台。それは何も無いところから始まり、廃材を貰い受けながら周囲の人と協力しながら作っていったもの。屋根から雨漏りがした時も、友人とともに直したこともあった。そういったこともありながら、作り上げていくのは楽しいから大変だと感じたことは一度も無いのだという。

地域の人達も彼女に食材を提供したり、屋台へのアイデアを出したりと、たくさんの人が彼女を応援し協力してくれている。彼女の頑張る姿に、多くの人が心を動かされているのだ。

 

私もそんな多くの人の一人である。何としても成功してほしい。友人という枠を超えて、そう願うばかりだ。

 

気づけば3時間ほど談笑し、寒さを本格的に感じるようになった夜更けに、今回の試運転は幕を閉じた。

 

多くの田舎の町は衰退の危機に瀕しているが、それを救うのは、あまちゃん屋台のような小さなことからなのかもしれない。たくさんの人が彼女の屋台に訪れたり、頑張る姿に共鳴して多くの人が繋がって行けば、津和野の未来はきっと明るいものになっていく。そんな風に感じた、春の訪れが間近に迫る日の夜なのであった。

 

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最後に、今回の屋台の試運転に来てくれた私の友人二人からのあまちゃん屋台へのコメントと、あまちゃん自身のコメントを記載する。

 

りょーじろー(東京在住の大学生、都内の大学院に進学予定、栃木県大田原市出身)

「人生で初めての屋台だったから、どんなもんかなーって(笑)全く想像がつかなかったけど、予想していた以上にオシャレで、あの狭い空間がすごい良かったね。店主のあまちゃんとはほぼ初対面だったけど、面白い話もできたし、やっぱり”人”に”人”はついていくんだなって感じたわ」

りょーじろー

 

みずほ(東京在住の大学生、都内の企業に就職予定、東京都大田区出身)

「屋台がかなりいい感じの空間だったので、すごい楽しかった。屋台に初めて入っただけど、女性でも全然楽しめるいい感じのとこだったね。それで、あのこじんまりした空間だから、他のお客さんともあまちゃんとも話し易いので、顔見知りでない人とも仲良くなり易いと思う。あと、サブカルっぽい感じが、何となく下北沢っぽい雰囲気だなと(笑)」

みずほ

 

あまちゃん(津和野町地域おこし協力隊、屋台事業を企画中、埼玉県出身)

「率直に楽しかった。今回は身内だけでやってみたから、当たり前だけどアットホームな雰囲気になったなーと。わたしが理想としてるのは店員とお客という区切りがない空間だから、その雰囲気が少し見えた気がする。あと、感想やアイデアをもらえたのもすごくありがたかった。こうやって実際にやってみるといっぱい課題が見つかったし、これから生き物のようにメニューや形も変わって、どんどん変化していく屋台になっていくと思う。

今後はひとまずおでんを提供していくけど、これは冬メニューで、夏メニューや季節ごとのメニューも出してくつもり。屋台は3月半ばには始める予定で、最初は地域ごとの公民館やイベントで出店していって、徐々に地域にたくさん拠点を作っていきたいと思ってる。ゆくゆくは、わたしだけじゃなくて、たくさんの人が津和野で屋台にチャレンジして、屋台村みたいなものができたら面白いなと想像してる。今まではそんなに大変なことはなかったけど、本当に大変になってくるのはこれからだと思う。まあでも、やってみないとわかんないので、バンバン出店していきます!」

あまビール

(文/前田健吾、写真/前田健吾、宮武優太郎)

 

小林愛真美の過去記事はコチラ↓↓

地域交流×屋台ラーメン(?)21歳女子が津和野のために本気でラーメンづくりを行うワケ

 

 

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