地域交流×屋台ラーメン(?)21歳女子が津和野のために本気でラーメンづくりを行うワケ
津和野町鷲原地区にあるコミュニティスペース『厨(くりや)ファミリア』。ここで毎週木曜日に行われる『モク曜日の昼餉(ひるげ)』では、週替わりのシェフがランチタイムに自慢の腕を振る舞う。
今週のゲストシェフは、津和野町地域おこし協力隊として働く小林愛真美(あまみ)さんだ。
彼女が提供するランチは『ラーメン』。地域おこし職員が何故『ラーメン』づくりを行うのか。小林さんに話を伺った。
”人”と向き合うことで気づかされたこと
地域おこし協力隊として働く小林さん。今年の夏には地域の素材を使用した“かき氷”を提供する『氷屋』を期間限定でオープンさせた。
「今までは観光で町歩きなどのイベント企画を担当していました。しかし参加費はネット上で支払われ、イベントもパンフレットなどの媒体を通して実施されます。そのため、目の前のお客さんのために働いている、という実感がなかなか湧いてきませんでした。
津和野には観光名所はたくさんありますが、ゆったりできるカフェって意外と少ないんです。夏の日差しで疲れた身体に、地域の素材を使ったかき氷を食べて、休んでくれたらいいな、そんな想いでかき氷屋を始めました」
いざ始まってみると、お客さんとの交流が楽しかったと小林さんは話す。
「自分が作った商品を目の前の人が受け取って、『美味しい』って直接言ってもらえる。これは本当に嬉しかったです。『ネットで見て広島から来ました』って言ってくれる人もいました。この時、『媒体を通さずに直接”人”と向き合う方が、私には向いているんだな』と確信しました。
また観光客だけでなく町の人もたくさん来てくれて、『こういうのがあったらいいよね』ってアイデアも出してくれたんです。これが、今日ラーメンを出すきっかけにもなるんです」
居酒屋事情を「屋台」で解決する
小林さんが目指しているラーメンは、ただのラーメンではない。『呑んだ後に食べたくなるラーメン』作りを目指しているという。その理由は、「移動式屋台で、ラーメンを提供したいから」と話す。
「移動式屋台の企画を始めたきっかけは、氷屋で町の人と話していた時でした。『ふらっと気軽に立ち寄れる飲み屋が欲しい』という声があったんです。町中には居酒屋はいくつかありますが、そうはいっても津和野町は広いです。居酒屋も食事処も無い地域がほとんど。仕事終わりに自宅で飲むか、地域の公民館で飲むかくらいですね。居酒屋までタクシーで1時間ほどかけて、通う地域もあります。夏にかき氷屋をやってみて、人が交流できる場所を作ることがとても楽しかった。じゃあ今度は移動式の飲み屋を作ってみよう!と思い立ちました(笑)」
そんなラーメンの試作品を、今日「厨ファミリア」で提供してみたのである。
その名も『あまちゃんヌードル(仮)』。醤油ベースの野菜からとったスープ。ここに自家製チャーシューのタレを加えているのがミソである。
トッピングのキャベツ・にんじんはスープの味が染み渡り、どこか懐かしい、誰にでも親しめる味わいだ。アンケートには「チャーシューが美味しかった」「スープが最高」との声があった一方で、「もう少しトッピングが欲しい」「屋台ラーメンなら味が濃い方が良い」との意見もあった。
もっとも小林さん自身は「色んな人の意見を伺うことができたので、それが今後のモチベーションにもなりました」と話す。
「年内の開業に向けて、今後は津和野の食材を使ったラーメンづくりや、ラーメン以外のメニューも考えていきたい。うまく循環したら、仕組みやノウハウを公開していき、津和野町のPRにも繋がればいいなと思っています」
自分の『やりたいこと』に気づいた小林さん。自身の活動を通して『地域交流』を目指し活動する、21歳女子が挑む移動式屋台づくり。彼女の動向から、今後も目が離せない。
(文/宮武優太郎)