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「岸信介」や「麻生太郎」のガイドまで務めあげた、90歳の【「ざら茶」×マイスター】の恩返し

 

津和野町で古くから親しまれている「ざら茶」を販売している

「香味園上領茶舗(こうみえんかみりょうちゃぼ)」。

取材に行くと、「どうぞ、お茶でも飲んで、ゆっくりしてください」

と家の中に上がらせていただいた。

立派な庭園を眺めて、身体の温まるざら茶を飲みながら、上領茶舗代表の上領清一さんにお話を伺った。

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不遇の時代を支えてくれた母

ー以下、上領さんー
私は津和野町で生まれて、津和野町で育ちました。現在90歳ですから、少年時代は戦時中でしたね。大変な事の多かった時代でした。上領茶舗は父が開業します。父はお茶が好きだったんですね、当時は京風の宇治茶を出していました。しかし父が出征することになり、昭和14年に戦死してしまう。上領茶舗も休業を余儀なくされます。更に3年後には住んでいた家も焼失してしまったのです。

数年間、親戚や知り合いの家を渡り歩いて居候をすることになります。当時は皆貧しいですからね、自分自身の生活に手一杯です。「もう出て行ってくれないか」と言われることもあり、ましてや親戚までにも断られる惨めな気持ちと言ったら、辛いものがありました。その逆に同級生の家族から「困ってるならウチに来いよ」と言われる喜び。これは本当に有り難かったですね。

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兄弟4人を女手一つで育ててくれた母には本当に世話になりました。私がケガをした時も「ご利益があるから」と言って、険しい山道の奥にある神社にお参りに行ってくれたんです。女性一人で大変だったでしょうに。
唯一の心残りは、母に「こんなにも大変なら、私なんか生まれて来なければ良かった」と言ってしまったこと。あの悲しそうな母の顔と言ったら・・・今でも覚えています。もしもう一度会えるのであれば、そのことを謝りたいですね。

人生のパートナーとの出会い

上領茶舗を再開業させるのは、戦後の1947年のこと。お茶の統制が解除された時期でした。その頃私は社交ダンスクラブに入るのですが、そこで妻と出会います。当時妻は私のダンスパートナーでした。練習に夢中で、毎日夜11時ごろまで練習していましたね。2人で大会の表彰もよく取りました。今のように娯楽がたくさんある訳では無かったので、熱中することはこれくらいしか無かったんですよ(笑)。

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山陽新幹線が開通すると、津和野に観光ブームが来ました。その時期も、2人で色々やりましたね。1965年に津和野の観光協会が設立されるのですが、私は公認専属ガイドとして奔走しました。内閣総理大臣も務めた岸信介(安倍総理大臣の祖父)さんや、麻生太郎さんの案内役も務めました。1974年には映画『男はつらいよ』の撮影が津和野で行われるのですが、その時吉永小百合さんも津和野に来たんです。クルーが「撮影に使わせて欲しい」って言うものだから、自宅の2階を貸すと、泥だらけにして帰って行かれました(笑)。
妻は頭巾を被って踊る特徴的な盆踊り、『津和野踊り』に踊り手として参加していました。NHKの番組にも取り上げられ、東京にも収録に行っていましたね。私も取材を受けたのですが、当時のテレビの影響力はすごいですね。道行く人に「あんたテレビで見た顔だね」って言われていましたよ。それもこれも、妻から受けた恩のお陰でもあると思っています。

ざら茶の復活は、人々からの御恩のお陰

観光ブームの前に、ざら茶という商品を作るんです。ざら茶とは、カワラケツメイというマメ科の植物から作ったお茶のこと。これを妻が商品として出してみたらどうかと言うんです。「津和野では古くから家庭で親しまれている味。必ず人気が出る」と。私としては当たり前の家庭の味だったので、人気が出るとは思わなかった。「とりあえずやってみようか」という話で、始めてみたんです。
ざら茶は2人で色々なところに売りに行きましたね。2日かけて山口に通いました。当時は道が舗装なんてされていないですから、今にも落ちそうな崖沿いの道を、土煙を上げながら車を走らせていました。

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すると「昔飲んだ味だ」と喜んでくれたお客さんがたくさん出てきたんです。観光ブームにも乗っかり、ざら茶は津和野へ来た就学旅行生の定番のお茶にもなりました。ノンカフェインの健康茶として、今でも全国のお客様からお問い合わせをいただいています。
私がこうしてこの年まで生きられているのは、ひとえに皆さんの御恩のお陰です。戦時中に家に招いてくれた同級生の家族たち、女手1人で支えてくれた母、二人三脚で働いてきた妻。他にも本当にたくさんの人々から、御恩を頂いています。この恩を返すつもりでこれからも生きていきたい。
『御恩に感謝し、有難う』。これが私の人生で、大切にしている言葉です。

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何度取材に訪れても、いつも快く受けてくださった上領さん。詳しい年号まで記憶されており、私の質問にも「それこの前言ったじゃあないですか」と指摘されるほど・・・。90歳になってもお元気な上領さんは、奥さんと昔話をされている時の笑顔が、一番素敵でした。
そんな上領ご夫婦が復活させたざら茶。『津和野町ふるさと納税制度』を用いても、お求めいただくことができます。詳しくは外部サイトまで。

外部サイト:ふるさとチョイス「ざら茶詰合せ」

「香味園上領茶舗」
住所: 〒699-5605 鹿足郡津和野町後田ロ519(JR津和野駅より徒歩10分)

TEL: 0856-72-0266
営業時間: 8:00~18:00 (定休日なし)
HP:http://tsuwano-kanko.net/buy/%E9%A6%99%E5%91%B3%E5%9C%92-%E4%B8%8A%E9%A0%98%E8%8C%B6%E8%88%97/

(文/宮武優太郎)

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