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背中には”森鴎外”の手紙。 国の登録文化財「分銅屋七右衛門」にて、煎茶を嗜んでみた。

津和野駅から徒歩5分ほどのところにある”本町・殿町通り”の一角に店を構えている「分銅屋七右衛門」。

1853年に津和野が大火に見舞われた際の廃材を使い、現在の分銅屋の建物が建てられた。

国の登録文化財にも認定されているその建物には、何とも言えない趣深さがある。

今回は分銅屋を切り盛りされている椿夫妻よりお誘いいただき、店の裏にある床の間でのお茶会にお邪魔させていただいた。

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まずは部屋を嗜む

こちらがお茶会で振舞われている”煎茶”のセット。そう、お茶会というと”抹茶”をイメージされる方が多いと思うが、ここでのお茶とは”煎茶”なのである。

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古くは唐の陸羽(りくう)によって始まられたとされる茶の文化。

抹茶は、古くは千利休に習った織田信長や豊臣秀吉などによって世に出回った。抹茶を飲む際の作法は、少し堅いものがある。

一方の煎茶は、サロンで芸術家などに振舞われるようなものだったという。そこでは、もちろんある一定の作法は存在するものの、抹茶ほど厳しいものではなく、その場の雰囲気や会話を楽しむことが重視されるのだという。

そんな、煎茶を嗜むお茶会。

まずは煎茶が振舞われる部屋の床の間を、じっくりと眺めてみよう。


床の間には掛け軸と花、柿を模した香箱が飾られている。

掛け軸に書かれている内容を、よく見てみると、

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【十一月七日 森林太郎】と記してある。なんと、在りし日の森鴎外が書いた手紙が貼られているのだ。

ちなみにお茶会が行われたこの日も【11月7日】。

椿夫妻の何とも粋な計らいである。

「部屋に通されたらまずその部屋の調度品などに気を張り巡らし、

凝らされた様々な工夫や美を堪能することもお茶会の嗜みなんだ」

椿夫妻からそういったことも教えていただいた。

煎茶を嗜む

dsc_1419さてさて、そうこうしているうちに、お茶をいただける時がやってきた。

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ご主人がお茶をついでくださっている。

一つ一つの味が均等になるように、目で確かめながら丁寧にお茶を入れてくださっている。

ご主人がお茶を入れ終えると、奥様がそれを我々に配ってくださった。

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独特ななお茶の風味が漂ってくる。

このような煎茶の場合、3口で飲み終えるのが作法なのだという。

それをまず一口飲んでみた。

少し苦味のある、まろやかな舌触り。しかし抹茶とは違う、何ともあっさりした味わいのお茶である。

飲み終えると、まだ口の中に苦味が残っている。

ここで、椿夫人からお菓子の方を配っていただいた。

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よく見てみると、”花”という文字が中央におかれており、その右に三日”月”があるのがわかる。

真っ白なお菓子は、しんしんと”雪”が舞っている景色を彷彿とさせる。

そう、このお菓子は自然の美しい様を表す言葉である「雪月花」を表しているのだ。

実際にこのお菓子を食べてみると、溶けるように口の中に甘い味が広がる。

この甘みが、煎茶の苦味と絶妙にマッチするのだ。

器は山口県の”大内焼”のもので、添えられているようじは、それぞれの雰囲気を壊さないように、あえてシンプルなものを提供されている。

何とも、素敵な組み合わせである。

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お茶は計3回振舞われた。

お菓子を食べ終えた後は、お茶の渋みが徐々に薄くなっていっているのが感じられた。

お茶とお菓子の味の加減は、見事に計算されていた。

調度品、会話を嗜む

お茶を嗜んだ後は、部屋にある調度品のことを説明していただいた。

dsc_1420元々商人であった分銅屋の家には、今でいう不良債権リストも保管されていた。

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それらの説明が終わった後は、別室での雑談タイム。

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昼過ぎに始まった会ではあるが、楽しい会話は続き、気づけば18時頃まで話し続けていた。

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これまで何度かお尋ねしたことがあるのだが、訪れる度に新たな発見をすることができるくらい、歴史のある建物、こだわりある調度品、古い時代の息遣いが感じられる遺産がここには溢れている。

我々のような若造のおもてなしにも、決して手を抜くことなく、最後まで楽しませていただいた椿ご夫妻。

「またいつでも気軽にお尋ねください」とおっしゃってくれる人情味溢れるお二人も、この分銅屋の魅力の一つである。

次に訪れるときはどんな発見ができるのか、今から楽しみでたまらない。

(文/前田健吾)

【分銅屋七右衛門 】

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住所:島根県鹿足郡津和野町後田口190

TEL:0856-72-0021

公共交通:JR津和野駅→徒歩7分。または萩・石見空港→車35分。または山口宇部空港→車1時間20分

車:中国道六日市ICから国道9号経由46km54分

駐車場:なし

時間:8時30分~17時30分

休み:不定休

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