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「音楽は私たちに必要だった」 最高齢80歳のご当地バンド『ザ・テレー・グレーズ』 災害に遭っても、音楽に熱中する理由とは

最高齢80歳のバンドが、津和野町の各イベントで活動中だ。その名も、ザ・テレー・グレーズ。今回はバンドの編曲担当である三家本さんを中心に、練習風景を取材させていただいた。
文/宮武優太郎(2016/11/3)

日々の生活はのらりくらり。音楽の練習は本気で。

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ザ・テレー・グレーズのバンド名の由来。それはどのようなものなのだろうか。三家本さんはこう答えてくれた。
「『てれ〜ぐれ〜』とは、津和野の方言で『のらりくらり』という意味。『のらりくらり』と暮らしている人達が集まったから、この名前にしたんです(笑)。ザ・テレー・グレーズは主に津和野町名賀(なよし)地区の人達で構成されています。同じ小学校を卒業した仲間ばかりの、幼馴染みバンドですね」

バンドの練習日は毎週水曜日の13時半からから16時30まで。3時間たっぷり練習を行う。
dsc_0906「主に演奏するのは、『瀬戸の花嫁』、『いい湯だな』、『浪花節だよ人生は』、『夜霧のしのび逢い』などの私たちの世代が親しんだ楽曲。子供向けのイベントの時は、アニメ楽曲なども練習しますね。ウチのバンドは練習では最後まで揃わないことも多いんだけど、本番では何故かピッタリ合うんだよね」
と三家本さんは笑って話してくれた。

練習が始めると、真剣な眼差しで楽器を手にするメンバーたち。演奏に対して意見を出し合い、時に笑いながら、全員が演奏を楽しんでいるように見えた。

「私たちのバンドは『音楽はこうじゃないといけん』という厳格なルールは決めていません。高度な演奏技術を披露するバンドじゃないですからね。全員のレベルを見て、全員が楽しむことができ、一体感が出る作曲をこころがけています」

そう三家本さんは語ってくれた。

それでも、メンバーの楽器練習に懸ける想いは相当なものだ。ギターを担当する最高齢メンバー・中村さんは、現在80歳。本格的にギターを始めたのは数年前のバンド加入後だった。当初は楽譜を読むこともままらなかったそうだが、本人の努力と周囲の支えもあり、着実に演奏技術を身に付けていく。現在のギターは4代目という熱中ぶり。
「普段はのらりくらりしてる人たちだけど、音楽は本気で練習するバンドだよ」
メンバーは口を揃えてそう話す。現在は約40曲のレパートリーを持つザ・テレー・グレーズ。音楽に対する姿勢は、確かなものだった。

豪雨災害を乗り越えて

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そんなザ・テレー・グレーズも、活動休止を余儀なくされた時期があった。

「2013年の7月28日、津和野町は記録的な豪雨により大規模な水害に遭いました。特に被害の大きかった名賀地区は、川の氾濫や土砂崩れが酷く、一時期孤立状態になるほどでした。バス停の屋根の高さまで、土砂が積もっていましたね。車を走らす際は、土砂の上を通っていました。練習場所の小学校も通行止めで立ち入ることが出来なかった。この状態で活動ができるはずもなく、3ヶ月間は自宅の泥かきや掃除に追われました」
被害が一旦収束に向かうと、全てのメンバーが再結集したそうだ。

「やっぱり、音楽がやりたい、って皆が思い始めたんですね。どんな災害に遭おうとも、それが音楽を止める理由にはならなかった。毎日を幸せに過ごすために、音楽は皆に必要だったんです」

目標を持つことの大切さ

お話をお伺いした三家本さんは、元々陸上自衛隊出身。当時は音楽隊で活躍していた。

dsc_0893「小学校3年生の時に津和野で見た自衛隊の音楽隊が、とても格好良かったんです。その時『音楽隊に入ろう』と決め、自衛隊を目指し隊に入ることができました。退役後もバンド活動をしたり、神事がある際には笛を吹いたり、音楽と関わる生活は続けています。ザ・テレー・グレーズの楽曲の多くも、私が編曲させてもらいました」
ザ・テレー・グレーズのメンバーは皆、練習熱心。作った楽曲を熱心に練習してくれるメンバーの姿勢には、三家本さんも感謝しているそうだ。

「作った楽曲を一生懸命練習してくれる。編曲していく上で、それほど嬉しいことは無いですね。それに活動熱心なメンバーは私だけではありません。町内のイベントへの参加を繋げてくれたのは、町会議員を務めているギター担当です。他にも夫のパートを引き継いでくれた女性ドラムス、私たちの演奏に感銘を受け津和野外から練習に参加してくれているサックス奏者。皆熱意があるから、今もこうして活動することができているんだと思います」

ザ・テレー・グレーズは昨年度、島根県老人クラブ連合会会長から、優良グループ表彰も受賞した。このバンドが積極的に活動できている理由はなんなのだろう。

「私たちには、もっと上手になりたい、次回の演奏会ではこういう演奏をしたい、という目標があります。目標があると、人生がイキイキしてくる。そして何より楽しい。ただボランティアをやるだけではないですから。それが他の老人クラブとの違いなのかもしれません」

三家本さんにとって音楽とは一体、どんなものなのだろうか。

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「音楽は人生の友達です。小さい頃からビートルズやクラシック音楽に親しみ、演奏もしてきた。音楽は色んな面を見せてくれるんです。演奏する楽しさ、作曲する楽しさ、バンドと音を合わせる楽しさ・・・。まさに『音を楽しむ』とでも言いましょうか。私はこれからもずっと、“彼”と寄り添って生きていくんだと思います」

現在ザ・テレー・グレースは次回の公演に向けて、NHKの震災復興テーマ曲『花が咲く』を練習しているそうだ。
日々はのらりくらりと暮らし、災害にも負けず、音楽は本気で向き合う。ザ・テレー・グレースの演奏に、これからも期待だ。

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