創業から”100年”以上の老舗、手作りの《源氏巻》にこだわるちょっとシャイなおじいさん。 【「倉益開正堂」・倉益和信さん】
いざ、「倉益開正堂」へ
集合時間午前9時。
我々が眠たい目を擦りながらも、今回の取材先の”開正堂”へ。
店内では優しそうな女性が私たちを出迎えてくれた。彼女は今回インタビューさせていただく倉益さんの実のお姉さまである。聞くと、この開正堂は代々家族経営で受け継がれてきたとのこと。
店内にはこれまでの功績である数々の賞状が掲示されており、中には阿藤快さんのサインも。
そんな阿藤快さんを始め、数これまで々の芸能人や女優が訪れてきたそうだ。
他にも萩焼や鷺舞の人形などのレトロな調度品であったり、かつて計量の際に用いられた竿ばかりや型盤などの歴史を感じられる掲示物もある。
店内を存分に眺めたのち、店頭にいた倉益さんのお姉さんに工場内まで案内していただいた。
そして、工場内へ
中に入ると、2人が源氏巻を焼き、1人が源氏巻のパック詰めを行っていた。聞くと、あんこ作りと生地作りが終わってからこの焼く作業に入っているとのこと。あんこ作りからハンドメイドにこだわるあたり、プロ意識というか気概というか、何か熱いモノを感じる。
そんな忙しく働いている真っ只中であったが、今回のインタビュー相手である倉益さんは、我々の質問にとても丁寧に答えてくださった。
改めて、今回のインタビュー相手は倉益和信さん(67歳)。津和野町内の高校を卒業後、家業である開正堂を引き継ぎ、現4代目に当たる。以来、約50年間に渡り開正堂にて源氏巻を作っている。最近では、共に働いている甥に店を譲ることを考えているそうだが、まだまだ第一線で源氏巻を作る現役バリバリの職人である。
5種類の源氏巻には、倉益さんは特別な思い入れがあるそうだ。
「あんこも一種類じゃ面白くないと思って、五種類に増やしたんですよ。」
少しはにかみながら、倉益さんはそう語ってくれた。
それまでは、こしあんの源氏巻のみであったのを、4代目である倉益さんが5種類に増やしたのだと言う。手作りに徹底的にこだわる開正堂では、あんこも一から作っているため、5種類に増やしたのはかなり手間の増える作業である。
「お客さんが喜んでくれたら、それで充分じゃないですか。」
倉益さんのお客さんに対する温かい思いがひしひしと伝わってくる。
あんこの質にもこだわっており、普通の紫のこしあんと粒あんは北海道産。白あんも同じく北海道産のてぼう豆。やはり、北海道産は他の小豆の比べて質が全然違うのだという。抹茶あんは京都から、ゆずあんは四国からそれぞれ取り寄せているのだという。良いものを追い続けた結果、全国各地から取り寄せるようになったのだとか。
工場内を徘徊していると、ザルの上になにやら謎の白い物体の塊達が…
聞くと、白あんに使う小豆の皮だという。
あんこの工程を伺うと、
小豆を煮る→皮をむく→他の材料と一緒に煮る
というものだそう。
「小さな製造工場だからこそ、手作りにこだわるんです。」
一見単純な工程に見えるが、あの小豆の皮の量を見ると、とても大変な作業であることは見て取れる。
実食…
倉益さんが焼きたての源氏巻を我々に提供してくれた。
提供していただいた源氏巻は、何とも言えぬ香ばしい香りだ。
さて、一口、二口。
めちゃめちゃうまい。ざっくり言うと、とてもサッパリしている。私はそれほど甘いものが得意な達ではないのだが、これくらいあっさりなあんこだったらいくらでも食べられてしまう。
個人的にはゆずが一番好きな味だ。味はサッパリしていて、かつほんのり香るゆずの風味が最高である。
白あんは、紫あんと違って少しもっちりしている。味は大きく変わらないがこれもまたうまい。
抹茶はこちらも甘さ控えめ。ざらっとした舌触りが特徴で、こちらはな抹茶もしくは好き甘さ控えめ好きにはオススメだ。
粒あんのツブツブの食感はたまらない。単純に味だけではなく食感を楽しむのも、オススメである。
「いい時も悪い時も見てきましたが、この商品がたくさんの人の手に渡り、その結果として全国の方に津和野のことを知ってもらいたい。」
倉益開正堂での仕事を文字に表すと…
最後に、倉益さんが仕事をする上、生きる上で大切にしている言葉を半紙に書いていただいた。
その言葉は、、、
「真心」
この言葉に向き合い続けているからこそ、どんな作業でも一切手を抜くことなく、丹精が込められた素晴らしい商品が作れるのだろう。
私も倉益さんのように、自分の真の心に向き合って、徹底的にこだわり抜く人間でありたいと思う。
そんな倉益さんを始めとする開正堂の方々が徹底的に手作りにこだわって作った5種類の源氏巻。
ぜひ、一度召ご賞味あれ。
(文/前田健吾)
「倉益開正堂」
〒699-5605 島根県鹿足郡津和野町後田ロ210
TEL:0856-72-0028