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「田園回帰1%戦略〜地元に人と仕事を取り戻す」著者・藤山浩氏 講演会

3月27日、津和野町須川地区で「田園回帰1%戦略〜地元に人と仕事を取り戻す〜」の著者・藤山浩氏の講演会が行われた。
本講演は、須川地区の活性化を促すまちづくり委員会の活動の一環として行われたものである。
文・取材/前田千晶(2016/4/26)

田舎の大逆転

「およそ50年前、高度経済成長による都市部の工業化に伴って、地方から都市へ人口流出が急速に進みました。
たった10年程度で3000世帯、10000人が都市部の団地へと住まいを移しました。
今、このときのしわ寄せで大変なことが起こっています」

「10年かけて3000世帯が子どもを連れて団地へやってきたわけですが、いまその子どもたちは自立し、団地から去っています。
これから起きるのは、団地に団塊世代(親世代)が残されることで生じる、都市部の一斉高齢化です。
都市部の高齢化率は、2015年には島根県の中山間地域と並びました。2025年には追い越す見込みです」

「団地は限界を迎えている」と警鐘を促す藤山さん。さらにこう加えます。

「これまでは中山間地域において人口減少、そして高齢化が進むと言われてきました。しかし、逆転が始まったのです」

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1%戦略とは何か

都市部の団地で高齢化が進行する中、都市で暮らす30〜40代の地方移住、特に島根県への移住が進んできています。

「ここ5年間ほどで「田舎の田舎」へ若い世代、次世代が続々とやってきています。
具体例をあげると、4歳以下の子どもの増加です。
少子化が叫ばれていますが、島根県の中山間地域全227地区のうち1/3を超える地域で増加傾向にあります。
現状維持も含めるとその割合は4割を超えます。

さらにその親世代、30代の女性においても、4割を超える地域で増加しており、維持も含めると5割超にもなります」

「面白いのは、松江や出雲などの中心部に近づくほど子どもや女性が増える、といった傾向が一切ないことです。
むしろ中山間地域や島に増加傾向があります」

中山間地域には、人口問題以外にも、空き家や耕作放棄地、人手不足など多くの課題を抱えています。
しかし、こうした状態はときにプラスに働く、と藤山氏は語ります。

「地域内では、課題の解決に取り組む外部の人を受け入れていこう、一緒に頑張っていこう、という気持ちが広がっています。
そして、実際にそうした取り組みが始まってきているんです。
「田舎の田舎」には厳しい部分もあるけれども、ただの限界状態ではありません。
新たな暮らしが生まれる場、フロンティアになれるはずです」

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藤山氏が開発した手法を使用すると、人口増減予測やそれぞれの地域の人口安定に必要人口数を算出することができます。
全227地区での集計結果を解説していただきました。

「全227地区の人口安定という高い目標をクリアするためには、合計2920人の人口増が必要です。
2920人とは、島根県の中山間地域の人口の1%、首都圏人口0.01 %に値します。
これは県外への人口流出を抑えるだけでも安定に向かっていく人数です。
つまり決して桁外れに大きく、実現不可能な値ではないのです。」

「「1%戦略」という言葉を私は使用しますが、これはいい加減に言っているのではなく、
島根県の中山間地域の統計データを積み上げ、実証した数字なのです。
実際に2015年、益田市二条地区では、地域を上げて定住対策を行い、1%戦略を成功させています。」

地域に人を取り戻す際に大切なポイントを藤山氏はこう分析します。

「小さな集落ほど1人の力は大きくなります。なので焦らず1人ずつ、1組ずつ取り戻していけば成果につながるでしょう。
逆に、一気にたくさんの人を呼び込むことに私は反対します。
なぜならば、50年前の都市部団地と同じ過ちを繰り返すことになるからです。
移住者の方に地域に対する親しみを持ってもらいながら、ゆっくりと着実に対策に取り組むことが大切なのです」

人口増は「本当の地方創生」ではない

平成27年度に各市町村は「まち・ひと・しごと創生総合戦略」や「人口ビジョン」を策定しました。
藤山氏は、これらに頼りきるのではなく、各地区(定住自治区)ごとに戦略を考える重要性を説きます。

「各地区ごとに人口の見通しを立て、外部から人を呼び込むプランやプロジェクトづくりに住民主体で取り組んでいく。
そしてその取り組みを各市町村が支援していく。この両輪が「本当の地方創生」だと私は思います」

「皆さん、代打逆転サヨナラホームランはそう簡単にはやってきません(笑)。
もっと小さなことから始めましょう。
まずは地域内から、できれば地域外からも、人が集まる場所や機会をつくることが大切です」

「高知県土佐清水市の例をあげましょう。公民館が月に一度「モーニングの日」を設定しています。
その日だけは公民館が喫茶店になって、みんなで朝食を食べるんですよ。
皆さんこの日を楽しみにされていて、この日に合わせて子どもや孫も帰ってきます。
200人の集落ですが、この日は全員がそこで朝食を食べるんです。
移住・定住を考えている方がこういう場所にきてくれれば、その地区のことを知ることができますよね。」

「こういった取り組みは、ずっとやり続ける義務があるわけではありません。
極論、面倒になったらやめてもいいんです(笑)。
小さなところ、失敗してもいいところから取り組めばいいんです」

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「小さい」を武器にした地域活性

今、田舎では「小さな拠点」をつくって、地区ごとの暮らしや伝統を守ろうという動きが広がっています。

「たとえば、イギリスにはパブがありますよね。パブと聞くと、お酒を飲む場所だと思いがちですが、そうではありません。
現地では薬やクリーニングの受け取り、日用品の注文などができる生活の場所として機能しています。
イギリスでアンケートを行うと、パブは地域を結びつける拠点としてダントツの1位です。
子どもから大人まで気軽に集まれますからね」

「小さな拠点があれば、住宅を密集させる必要はありません。
ただ、暮らしを支える要素が点在しているのは不便ですから、それぞれが消滅してしまう可能性があります。
小さな拠点を中心に、モノや人、金の流れを地区内で循環させていくことが大切です。
小さな拠点が生活を支える、そんな仕組みをつくることで、地域活性化につながるのです」

「小さいからこそできることがある」、そう訴える藤山氏は次のように提案します。

「小さな地域だからこそ、小回りが効くはずなんですよ。
地域を支えるコミュニティーづくりから、移住者のサポートまで、
小さいからこそ分野を横断して取り組むことができるはずです。
この仕組みをつくって、地域内の金の循環を加速するために、小さな会社を立ち上げてみることを私は勧めています」

「ここにしかないもの」を大切にしよう

最後に藤山氏はこう語りました。

「「どこにでもあるもの」で暮らしていきたいのであれば、東京が一番いいに決まっています。
しかし今日の若者は、「ここにしかないもの」を求め、自分の暮らしを自分でつくるという方向へ向かっているのです。
だから皆さん、焦らないでください。各地域ごとの「ここにしかないもの」をじっくり理解してもらえばいいのです。
須川地区にしかないものを、気に入ってくれた人に移住してもらえばいいんですよ」

「手間暇かけたものしか、人の心や記憶には残らんのです。したがって我々も目先のことだけに捉われるのではなく、
先人たちがしてきたように未来に向けて行動していくことが求められています。
つまり今が頑張りどころなのです。一人だけが頑張るのではなく、地域全体で取り組みましょう。
そしてその取り組みを記憶し、伝えていきましょう。その過程が、「未来をつくる」ということに繋がっていくはずです」

須川地域ではここ2年間で、2組3人の方が移住され、今年の1%戦略は達成しました。
これは実際に須川で暮らす方々が、現在まで伝統を紡いできたこと、
地域内行事に主体的、または間接的にでも住民の方が関わろうとしていること、守ろうという強い意志があることなど、様々な努力を積み重ねた結果ではないでしょうか。
藤山氏の言う「ここにしかないもの」とは、そんな想いなのかもしれません。

地元住民と藤山氏が火を囲む〜地元食材にこだわったバーベキュー

「ワクワク須川実現!プロジェクト」報告会、そして藤山浩氏による講演会あと、バーベキューが開催されました。
津和野で採れた野菜や猪肉、地酒など積極的に使用することにこだわり、行われています。
藤山氏と地元の住民の方々で火を囲みました。

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須川地域ではここ2年間で、2組3人の方が移住され、今年の1%戦略は達成しました。
これは実際に須川で暮らす方々が、現在まで伝統を紡いできたこと、
地域内行事に主体的、または間接的にでも住民の方が関わろうとしていること、守ろうという強い意志があることなど、
様々な努力を積み重ねた結果ではないでしょうか。

私は今回のバーベキューに参加し、須川の方々の「みんなで仲良く、楽しく暮らそうや」という想いを感じました。
これは既に須川で暮している人にも、外からやってくる移住者の方にも当てはまると思います。
藤山氏の言う「ここにしかないもの」とは、そんな想いなのかもしれません。

 

 

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