津和野酒蔵開き 日本遺産「百景図」に五感フル活用で迫ってみた〈後編〉
はらはらと粉雪舞い散る中、津和野町の歴史文化に触れ、百景図と関連した食材を使った「津和野百景図御膳」を味わうために、昨年日本遺産に認定された百景図の記念イベントへ参加してきた。酒蔵開きに合わせて行われた今回のイベントを機に、津和野町の歴史や文化を考えてみよう。
〈前編はこちらから〉
そもそも「津和野百景図」とは?
津和野百景図とは、藩主の側に仕えた栗本里治が先々でスケッチした100枚の絵のこと。
約150年前、豊かな江戸時代の食や人々の営み、歴史などが描かれていて、今昔の対比を行うと非常に面白い発見があるという。
「なぜ、百景図のようなものが現代まで残っているのか」といえば、それは様々な時代の人々の手によって、今日まで守られてきたからだ。「2015年4月に「津和野百景図」は日本遺産登録されました。それぞれの時代の人が残そうと奮闘し、現代まで続いているもの。そしてこれからも残していこうとする姿勢に対して、認定されたのだと考えています」
色鮮やかな「津和野百景図御膳」
津和野の食というと、観光マップには「うずめ飯」「芋煮」「アユ」などが記されている。しかし、本当にそれだけなのだろうか。百景図には江戸時代のタンパク源でもあったカモの狩猟場の様子や、里に下りてきては人々を困らせたイノシシ、胴回り90センチにも及んだと言うタケノコなどが描かれている。
今回いただいた「津和野百景図御膳」。
たべるをcafeさんがつくってくださった。すべての品々が百景図に描かれた食材などと関連している。
献立は次の通り。
鴨松風焼 エゴマ
干鮎出汁の風呂吹き大根 鮎味噌
蒸野菜のうるか和え
猪肉味噌焼 焼葱
初午稲荷の酒粕焼
筍ひろうず
薩摩芋の柚子煮
あらめと牛蒡の梅煮 木の実
里芋蓮根はさみ揚げ
菊芋のから揚げ 春菊
原木干椎茸と生姜の佃煮
小松菜と白菜のおかか和え
切干大根と三つ葉の胡麻和え
まめ茶粥
漬物
15品目、色合い美しい御膳。
私のお気に入りは里芋蓮根のはさみ揚げだ。
蓮根はカリッとしていて、里芋はトロっと。絶妙な食感が、食欲をそそる。
どれも絶品、大満足。
天然記念物からつくられた羽
続いて、第一回羽根つき大会が行われていると言う会場へ向かう。10回連続成功で、記念グッズを手に入れられるとあって、挑戦者があとを立たない。早速、私も10回の壁に挑むことにした。
今回の大会で使用された、この見慣れない羽。津和野町の天然記念物に指定された無患子(むくろじ)の種子と鴨の羽を使い作った、昔ながらの羽だそうだ。既製品では流星のように素早く、真っすぐ飛んでしまうが、この手作りの羽はくるくると回りながら、ゆっくりと、放物線を描きながら落下する。無事、記念グッズ(百景図ノートとポストカード)を手に入れることができた。
僕らの仕事は「きちんと見て、正しく伝えること」
最後に、本イベントの開催に携わったひとりである、
津和野町商工観光課の米本潔さんからいただいた言葉を紹介しよう。
僕らの仕事は「伝えること」です。
津和野には、もともと伝えるべき素材がたくさんあります。
僕らが忘れてしまっているだけで、祭りや風習、百景図もそんな素材のひとつです。
忘れてしまっているものを発見して、魅力を発信していくこと。
後世に語り継いでいくことが、今求められています。
しかし僕らの世代が誤って後世に伝えてしまったら、
その誤ったものが正しいものだということになってしまいます。
そうならないためにも、何百年と重なっている伝統をきちんと見て、
世代を超え、正しく伝えていかなければなりません。
今回のイベントだけでなく、百景図がその足掛けになれば嬉しいです。