ツワノシゴト模様 島根県津和野町発信、生き方を探すローカルメディア

津和野高校生が町長に政策提言「まちに移住者呼び込んで」【提言の全文掲載】

津和野町では11月20日、町内唯一の高校である県立津和野高校の2年生2名が、下森博之町長に対して政策提言を行った。
高校生は30分ほどのプレゼンテーションのなかで、少子高齢化問題に対する解決策を提案。ターゲットを絞った移住支援策や、子どもを育てやすい環境の整備などを訴えた。発表後は、質疑応答および提言の実現に向けたワークショップも行われた。

下森町長は高校生の提言に対して「真剣に町のことを考えて提言してくれたことに感謝したい。いただいたアイデアを、ひとつでもふたつでも実現できるといい」と熱のこもった口調で話した。

ツワノシゴト模様では、この高校生によるプレゼンテーションの全文を掲載する。
若い世代はいまの津和野町をどう見ているのか、まちに対してどのような想いを抱いているのか。高校生の視点に注目したい。
編集・構成/瀬下翔太(2015/12/01)

teigen

高校生による津和野町長への政策提言
――「3つのK」と「シェア」で魅力的なまちづくりを

Sさん:それでは発表をさせていただきます。よろしくお願いします。
私たちが今回お話するのは、「高校生による津和野町長への政策提言――「3つのK」と「シェア」で魅力的なまちづくりを」です。

まずは自己紹介をさせてください。私はいま、津和野高校2年生です。幼いときから、今までずっと津和野で過ごしてきました。今日、この政策提言に参加した理由は、津和野の問題や現状をしっかり考えたうえで、津和野に自分なりに地域貢献をしたいと思ったからです。短い時間ですが、よろしくお願いします。

Nさん:私も、おなじく津和野高校2年生です。幼い時から中学校までは、隣の吉賀町で育ち、高校からこの津和野で寮に入って暮らしています。高校に入ってから、吉賀と津和野それぞれの良いところに気づかされたので、将来ここに戻ってきたいと考えています。
今の私にもできることがあればやってみたいと思って、今回の政策提言に参加しました。

それから、今回は、部活動の大会で発表には参加できませんでしたが、津和野高校2年のKさんも政策提言の準備に参加していました。彼女は大阪で生まれ育ちましたが、高校から津和野高校の「全国募集」に応募して、津和野へ引っ越し、寮生活をしながら、津和野高校へ通っています。以上の3人で政策提言の準備を行ってきました。では、発表をはじめます。

人口減少問題を解決するふたつの方法

Nさん:私たちが津和野町で一番問題だと思うのは、人口減少問題です。
今、津和野町は老年人口が年少人口の約6倍になっており、老年人口は40パーセントを超えています。

子どもが少なくお年寄りが多いので、このまま進むと、2060年には津和野町の人口は2000人ほどになってしまいます。
なので、この人口減少の問題を解決しなければいけないと考えています。

この人口減少を防ぐには、ふたつの方法があります。まず、出生率を増やす方法です。
この方法では、津和野町の出生率を、島根県が掲げる目標値である2.08まで引き上げることができたとしても、人口は200人しか増加しません。出生率を増やす方法は重要ではあるのですが、あまり効果的ではないと考えています。

次に、転入者を増やし、転出者を減らす、という方法があります。
たとえば、毎年転入者を10名増加させて、転出者を10名減らすことができれば、人口は2060年に1000名も増加します。
私たちは、この「転入者を増やし、転出者を減らす」方法が効果的だと考えています。

いま見てきたように、人口減少問題を解決するためには、移住者を増やすことが大切です。そこで、移住者を増やすために、人がどんなタイミングで住む場所を変えるのか考えてみました。

Sさん:人が住む場所を変えるタイミングは、大きく分けて3つあります。

1つは、私たちが高校や大学に進学するタイミング。
2つ目は就職のタイミング。
3つ目は、子供の進学の際に一家で移住するタイミングです。

これは、津和野から人がでていくタイミングでもありますが、同時に津和野への移住者を増やすことができるタイミングでもあります。特に子どもの進学で移住する場合は、一家丸ごと呼んでくることができます。

Nさん:こうした前提を踏まえて、私たちは3つの世代をピックアップして、彼らを呼んでくる方法を考えました。3つの世代とは、高校生・起業家・子育て世代の「3つのK」です。この3つのKに焦点を当て、それぞれの視点から見た津和野町の魅力ともっと良い方向へ改善できる点を紹介します。

県外からの高校入学者を増やすには

Nさん:まず、1つ目のKは高校生です。都市部に住んでいる高校生にとって、津和野高校は大きな魅力があります。津和野高校では、問題を抱えた生徒が心機一転して再スタートを切ることができるからです。

実際、津和野高校には、都会の騒がしい環境が苦手で、中学校に行くことができなかった生徒がたくさん通ってきています。そのような生徒たちは、津和野で心機一転したいと決意して進学してくるのです。そうした再スタートを切りたいひとにとって、津和野高校はとても魅力的です。

また、都会の生徒たちにとって魅力になるのは、人と人の距離が近いことです。都市部の学校は人が多く、人づきあいが希薄になりがちです。しかし、津和野、特に津和野高校は生徒間や生徒と先生の結びつきが強いです。学生のうちから FACE TO FACE、顔を合わせるコミュニケーションを経験し豊かな人間関係を築くことができます。

その他にも津和野高校には鍛錬行事などの伝統ある行事や、留学生の受け入れ、さらに、外部の様々な活躍する大人と出会うことのできる総合学習の時間など、独自の面白いカリキュラムが盛りだくさんです。

このような津和野高校の魅力をさらに高めて、高校生が過ごしやすくなるための提案があります。それは、まず、生徒が集まれる場所を作ることです。平日の放課後に電車を逃してしまったときや、休日に、ふらっと立ち寄ることができる場所をつくれば、生徒同士の新しい交流が生まれます。また、そこに地域の人も参加することができれば、高校生と地域の人とのつながりも生まれると思います。

加えて、学校への提案にもつながるのですが、全国から生徒を呼び込むために寮の設備を綺麗にすること、また、今ある津和野高校の校則を常識の範囲内でゆるくすること、そして、もっと津和野の自然や歴史についての授業に力を入れて、津和野町への愛着や理解を深めることです。

津和野町で起業するひとを増やすには

Sさん:2つ目のKは、起業家のKです。どんな起業家を対象にするかというと、40歳以下の若者で新しく起業したいと思っている人です。私たちは実際に津和野にいる起業家や、東京から津和野に移住してきた方にお話しを聞きました。彼らから、起業家にとって津和野には魅力がたくさんあると伺いました。

伺った魅力は特に3つです。まず1つ目は、津和野はビジネスの種となりえる、拾われていないニーズがあることです。首都圏と比べて競争も少ないためにニーズを直接かたちにしやすいようです。

2つ目は、文化、歴史、自然の魅力です。東京出身の起業家さんから、津和野を都会の人に紹介するとすごく興味をもたれると伺いました。それは、文化・歴史・自然のバランスがうまくとれているからだ、とのことです。

3つ目は、津和野町がたくさんの課題を抱えているということです。津和野の一番の課題とも言える少子高齢化や、その他の課題が多いことは、一見ネガティブに思えます。しかし、それをポジティブに考えてみると、課題が多いということは、ビジネスチャンスがあるということです。
また、社会的な課題を解決したいと思っている、都市部の若者にとって、津和野町は魅力的なまちに映っています。

Sさん:津和野町で新しい事業をはじめるひとを増やすために、津和野に欲しいものをいくつかあげたいと思います。

1つ目は、津和野の現状や素晴らしさを都会の人に知ってもらうために、一週間津和野で研修をすることです。
津和野について知り、自分にあった、農業や林業、起業などの研修プログラムを受けることで、津和野で自分のやりたいこと、仕事をしたいと思う人が増え、大学卒業後や転職先として津和野に来てくれるのではないかと思います。

2つ目は、津和野には空き家が多くみられるので、これを素敵なオフィスに変えることです。
このことによって、新しく来た起業家にとって、仕事がしやすい環境ができるのではないかと思います。

3つ目は、ネット環境をさらに整備することです。
恵まれたネット環境があれば田舎でもできる仕事が増え、経済的な負担も減ると思います。

最後に、車についてです。起業する人や、現在津和野で仕事をしている人にとって、移動手段として車が大きな役割を果たしています。それに対して、都会の人はあまり移動に車を使わないので、車を新たに購入することが、移住の経済的負担になってしまうと考えます。
そこで、自動車を移住者同士で共有する仕組みをつくることが必要だと思います。

子どもを育てやすい町にするには

Nさん:最後のKは 子育て世代のKです。
子育てにはお金が沢山必要なので、既に子育てをしている方が移住をするのは負担が大きいです。
そのため、将来田舎で子育てをしたいと考える、都会の若い独身世代に訴えかけるのが良いと思います。

津和野町で子育てをする魅力として、次の4つを挙げたいと思います。

1つ目は教育費の安さです。津和野町では、中高生向けの塾として、HANKOHが無料で開かれています。
ここでは、有名大学出身の講師による高い質の教育が受けられます。
ふつうは高いお金を出して通わなければならない塾に、無料で通えるのは大きな魅力です。
また、小学生に対しては「つわのっこクラブ」というものがあり、放課後、家に誰もいない場合、預かってくれます。

2つ目は少人数教育です。高校では、進路や習熟度に合わせたクラス編成ができ、また少人数であるため一人一人の生徒に先生が向き合うことができます。
また、個人で先生と相談して添削を受けている生徒もいます。熱心な指導で、生徒の意欲や成績も上がると思います。

3つ目は自然の豊かさです。津和野は綺麗な川や山、星と多くの自然に囲まれています。
都市では、四季を感じる風景や、綺麗な星をみる機会は少ないです。
他の地域と比べても、誇ることができる自然の中で子供を過ごさせたいと思う保護者にとって、津和野はとても適した場所です。

4つ目はお祭りやイベントなど、地域コミュニティが充実していることです。
子どもがお祭りやイベントに参加すると、地域の方は大変喜んでくださいますし、それが交流の場となって、人とのつながりを経験できます。

Nさん:これから子育てをする人にとって、津和野をよりよい町にするためには、次のことが必要です。

まず、移住者と地域の人が関わりを持てる場が必要です。
なぜなら、地域のつながりがすでに出来あがったところへ突然、移住者が入っていくのは不安や心配があるからです。
そのため、移住者と地域の人が、顔と顔を突き合わせてコミュニケーションすることが必要だと思います。

そして、生活費の面でのサポートも必要だと考えます。新しく津和野に住むときには住居や車にお金がかかります。
ですから、その二つを安く使えるようにしたり、子供を産んだら生活費がやすくなる、などの支援があると良いと考えます。

津和野に戻ってきたくなるために

Sさん:3Kの移住だけではなく、自分たちはなにが津和野にあったら、津和野に戻ってくるか考えてみました。私たちが戻ってくるために必要なのは、人、仕事、環境、刺激の4つのバランスです。まず、それぞれについて説明したいと思います。

1つ目の「人」とは、都会から津和野に戻ってくるときに、家族や友人のほかに、面白いひとに出会える、ということです。面白い人とは、新しいことにチャレンジしたり、自分の信念をもって仕事に取り組む人のことを意味しています。

2つ目の「仕事」は、私達がやりたいと思える、面白い仕事のことです。私たちは、起業家が多くの仕事を作り出して、自分がやりたいと思える仕事や面白い仕事が、津和野町にたくさんあればいいなと思います。

3つ目の「環境」は、生活費の安さ、居住や仕事のスペースが確保されていること、地域の人との交流があることです。安く快適に住める住居や、オフィスがあれば、津和野に移り住んでくる人が増えると思います。また、地域のヒトと交流できるスペースがあれば、気軽に情報交換ができ、都会から来た人と地域の人との交流の場にもなると思います。

最後に「刺激」とは、今ある伝統的なお祭り以外の、イベントです。若者が楽しむことができるイベントがあれば、観光客も若者も増えるし、楽しそうで快適な場所として津和野が知られ、移住したいと思う人が増えると思います。

この4つのバランスが取れた町になれば、若者が帰ってきたい・移住したい場所になると思います。

「シェア」で町を活性化

私たちは、この4つのバランスをとるためには、「シェア」という考え方が大事だと思っています。その「シェア」の例を4つあげたいと思います。

Sさん:1つ目はシェアハウスです。

シェアハウスは顔をつきあわせて コミュニケーションや情報共有ができ、安い家賃で住むことができます。町には、シェアハウスを推進するために、基準をゆるめたり、改装しやすくしたりする条例などを作ることを提案します。この「シェアハウス」は、「人」「環境」「刺激」を満たすことのできる「シェア」であると言えます。

二つ目は、シェアオフィスです。
シェアオフィスとは、起業家や個人で会社を始めた人が共同で借りて利用するオフィスのことです。シェアオフィスの良さは、みんなでオフィスを共有することによって、一人あたりが支払う仕事場の家賃が安くすむことです。払う金額が安くなることで仕事がしやすくなり、より長く働くことができます。また、顔を突き合わせて居心地良く仕事ができる環境をつくることで、働くことに面白さや楽しさが生まれます。この「シェアオフィス」は、「人」「仕事」「環境」を満たすことのできるものです。

三つ目は、シェアファームです。
シェアファームは、津和野の農地を共有して、農業がしたい人が共同でお米や野菜などの農作物を育てる場所のことです。
シェアファームのいいところは、津和野の農地を有効に使い、つくった野菜を丸ごとマルシェなどに出してみんなで野菜をシェアできる点です。
シェアファームによって、農作物を育てることの楽しさや、町民同士が協力し合うきっかけが生まれます。
この「シェアファーム」は、「人」「環境」「刺激」を満たすことのできるものです。

Sさん:津和野高校では、このシェアファームへ近い体験として、田植え体験をしています。

四つ目は、「シェアフォレスト」です。
「シェアフォレスト」とは、みんなで森林を共有する試みのことです。
シェアフォレストによって、森林をつかって仕事をしたい人は、自由に森林を利用できます。
また、町民がみんなで森林を守っていくことができるようにもなります。
この「シェアフォレスト」は、「仕事」「環境」を満たすことのできるものです。

このシェアフォレストへ発展する可能性のある取り組みとして、津和野高校では、林業体験を行う「チーカツ」を実施しています。チーカツとは、地域活動の略です。
高校生が林業家のもとで林業体験を行うと、商品券を貰うことができるという取り組みです。

「3つのK」と「シェア」で魅力的なまちづくり

Nさん:ここまで、いろいろな「シェア」の例を考えてきましたが、このような「シェア」がたくさんある町になることで、私たちが戻ってきたい町になると思います。
最後に、改めて、私達の提言をまとめたいと思います。

今までの発表で私たちは2つのことを提言してきました。
1つ目は、「3つのK」に着目した提案でした。
高校生、起業家、子育て世代の3つのKに対して、津和野の魅力を伝え、より住みやすくするための対策を実施することで、多くの移住者を呼ぶことができると考えています。

2つ目は、「シェア」を進めることでUターン者を増やすという提案でした。
具体的には、シェアハウスやシェアオフィス、シェアファーム、シェアフォレストなど、たくさんの「シェア」をつくり出すことで、人、仕事、環境、刺激の4つをバランス良くもった町にできると思います。そうすれば、私たちは町に戻ってきます。

私たちは、自分たちが望むことをただ町に提言するだけではなく、私たち自身が町のために何かを始めたいと思っています。
たとえば、身近にある高校をよりよくするために動いたり、地域活動へ積極的に参加したり、「3つのK」と「シェア」を進めるために動き出したいと思います。

町を魅力的にするためには、ここにお集まりの方はもちろん、町民ひとりひとりが動き出すことが必要だと思います。
町民ひとりひとりが動き出せば、津和野町の未来を変えることができると思います。
一緒に動き出しましょう! みなさんにそう提案することで、私たちの発表を終わります。

島根県津和野町発信、生き方を探すローカルメディア

Copyright© ツワノシゴト模様 , 2015 All Rights Reserved.