ツワノシゴト模様 島根県津和野町発信、生き方を探すローカルメディア

「まずはやってみよう」。納得できる生き方を求める鎌倉市役所職員、津和野の町営塾へ。

初出の媒体:ファンモン3号

初出年月:2017年11月

渡辺未奈(わたなべ  みな)は、2014年から2018年3月まで津和野高校に併設する町営英語塾HAN-KOHに、スタッフとして勤務。他にも津和野町国際交流協会など、子どもたちの視野を広げるべく活動をしている彼女に話を聞いた。

 



学校の勉強だけで、進路なんて決められない!



私は東京で生まれ育ち、ここ津和野へ来ました。そのきっかけは大学時代に就職活動をしていた時までさかのぼります。当時、自分の前には多くの選択肢があるのに、そうではない友人がいることに強いショックを受けました。その友人は、母子家庭という自分ではどうしようもない環境の影響で就職という選択しかありませんでした。それなのに、自宅と学校、バイト先を行き来してきただけで自分の納得のいく仕事を考える糸口もないまま、先生に紹介された企業に入社したのです。入社後、友人が仕事はつまらないと繰り返し言うことに私はとても衝撃を受けました。


 自分自身が納得のいく選択ができる社会。そして、その手がかりとして勉強以外にも経験を積める学生生活であったらいい。当時そう強く思いました。こうした問題を解決するためには、行政からの支援が有効ではないかと考え、最初のキャリアは鎌倉市役所の公務員として働くことを選びました。しかしいざ入ってみると、自分の思いを実現するには課題も多く、もっと直接的な学生たちと関わる経験が必要だと気づき、転職を決めました。そんな思いを持っていた時に、津和野で町営塾が立ち上がったという話を聞きました。しかも生徒に対しては学業の支援だけでなく、「何がしたいの?」と密に対話しながら、様々な支援をおこなえる可能性があると。まさに私の問題意識に直結した仕事だと感じ、津和野に来ることを決めました。

 


まずはやってみる、を大切に。海外にだって行ける!



現在はHAN-KOHスタッフとして生徒の進路相談にのったり、授業も受け持っています。中学1・2年生向けの授業では、英語学習の基礎として母語である日本語のトレーニングをしています。読解を通じた情報分析や具体化、抽象化思考の練習や作文を書くこともあります。また、英語の学習にも取り組み始めました。ただ、私が一番やりたいことは将来の夢を自分自身で考え、選択ができる生徒を育てることです。しかし、できることを増やさないとせっかくの夢を叶えることが出来なくなってしまいますよね。ですから、可能性を広げるためにも、生徒たちにはまずは「学び方」を身につけてほしい。そんな思いでこの授業をしています。


学びの基礎ができてきた高校生に対しては、視野を広げていってほしいと思っています。やりたいことをまずはやってみる。たとえ失敗しても、その経験が人生を豊かにしてくれると信じていますし、そのためだったら勉強も頑張って身に付きやすいと考えています。また、やってみないと分からない、という思いは自分自身の経験から得た気づきでもあります。私自身、高校生の時に修学旅行でオーストラリアへ行ったことがありました。それまで海外というものは別世界のようだったけれども、意外と共通点があることを体感してからグッと近いものに感じるようになったんですよね。そうしたこともあって留学したいという生徒の支援も積極的に行っています。これは津和野町国際交流協会での活動の一つです。他にも協会の活動として、アメリカ人の短期留学受入れ事業もおこないました。異文化に触れて、様々なことを生徒が感じてくれたことは本当に自分にとって最高の喜びです。また約10カ月の留学生活を終えて帰国した生徒たちの成長も誇らしく感じました。視野が広がってやりたいことが具体的になったり、コミュニケーション力や行動力、思いやりといった力がさらに磨かれたりと素敵な経験をしたことが伝わってきました。言葉や文化も習慣も異なる環境の中で、相互理解を深めながら、確実に自分自身の世界も広げて帰ってきたのだと思います。

 

 


一つとなったチーム津和野高校—自らの人生を決められる生徒を育てる


心強いことに、この生徒たちのやりたいを応援するという考えは私だけが持っているわけではありません。「自ら学び、自らの可能性を広げる生徒を育てる」というビジョンをもったHAN-KOHのスタッフたちはもちろん、津和野高校の先生方も大切にされています。例えば、先日行われた総合的な学習の時間では、教員と高校魅力化コーディネーターとにより「生徒一人一人が、自分のやりたいことを実現する計画づくり」という授業も実施されていました。言葉は違えど、高校の先生方も共通した想いを持ってくらっしゃるからこそ、一緒になって生徒に対してどんな支援ができるのか模索しています。こうした可能性の広がりに以前の職場ではなかなか感じられなかった、自分の思いが実現できるかもしれないというワクワクする気持ちを感じています。


これから混沌とする時代になっていく中で必要とされる力はいくつかありますが、私はその中でも「ディシジョンメイキング(=自分の意志で決める力)」が重要になると考えています。子どもたちには、納得して決めることのできる人になって、豊かで幸せな人生を送ってほしいですね。そのためにできるかぎりのことを私自身も挑戦し、日々学んでいきたいと思います。

 


渡辺未奈

 

1989年、東京都新宿区生まれ。国際基督教大学卒業。大学在学時よりInnovation For Japan事業(現・FoundingBase事業)に関わり、卒業後は鎌倉市役所に就職。2014年より町営英語塾HAN-KOHに勤務。津和野町国際交流協会役員として、津和野高校生向け留学支援、海外からのホームステイの受け入れ事業なども行っている。

島根県津和野町発信、生き方を探すローカルメディア

Copyright© ツワノシゴト模様 , 2018 All Rights Reserved.