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2020.01.30

【コラボ記事】都市を科学する×つもよ(高校生×都市〜津和野編・上〜)なぜ自発的に地域で動く高校生が増えているのか。

高校生が学校の枠を超えて街で活動することは、「都市」にとってどんな意味を持つだろうか。

 

ケンチクとカルチャーを言語化するWEBメディア「BEYOND ARCHITECTURE」にて連載中の「都市を科学する」。この連載企画は、「〇〇のある都市」というテーマごとに、様々な視点から都市というものを探っています(個人的に小屋編が好きです)。そんな企画の担当の方から、つもよにお声がけをいただき、コラボ連載させていただく運びとなりました(初コラボ!)。

 津和野町は都市ではないですが、当連載の中で「高校生編」を扱ったことから「地方との違いみたいなものが見えたら面白いよね」ということで、お話をいただきました。

 

高校生と都市の良い相互関係を考える「都市を科学する〜高校生編」。これまで本誌では、横浜の事例を元に3回の連載をされてきました。第4回から、島根県津和野町の事例紹介をスタートします。前回までの横浜とは規模が大きく異なる人口約7300人の町の事例から、街と高校生の関係性に対してどんな相違点を見出すことができるでしょうか?


「活動の全てを把握するのが手一杯なくらい、
自発的に地域に入って活動をする高校生が増えています」

 

高校生の自発的な活動をサポートする、魅力化コーディネーターがそんな嬉しい悲鳴をあげるほど、町の至るところで高校生の姿が見られる津和野町。

 

この町の高校生は、どんなきっかけから、地域に入っていくのか。
地域にとって、そんな高校生の存在はどんな影響を与えているのか。
高校生と町の双方の視点から言語化をしていきます。

 


地域で活動しようと思ったのはなぜ?

 

「大人と話をするのって面白い」

 

「学校ではできないことがある」

 

「やりたいって思ったら、大人が応援してくれた」

 

|高校生と町の繋がりが多面化してきた津和野

島根県の西に位置し、朱色の映える太皷谷稲成神社や古い町並みが魅力的な津和野町。1970年代80年代には観光ブームとして多くの人が足を運びました。そんな町に唯一ある高校が、津和野高校。この高校の、多くの学生が自発的に地域に入り、自分のやりたい活動を行っています。

 

一時期は統廃合の危機に直面していた津和野高校ですが、地域に根付く教育伝統を守るため、全国でも先進的に高校魅力化事業に取り組み始めました。その結果、今では全校生徒の3分の1近くが島根県外から学びにきたり、町内のある中学校からの進学率が6割程度になるなど「学びに行きたくなる高校」としてその認知を広げています。

 

 

■自分の”やってみたい”を考える「総合的な学習(探究)の時間」
高校魅力化の取り組みで、大きな特徴となっているのが、総合的な学習(探究)の時間。高校生が自分自身の「やってみたい」に気付けるような取り組みです。これまで、つもよでも地域の大人を知れる「トークフォークダンス」、地域の大人から学ぶ機会「ブリコラージュゼミ」など複数の取り組みをご紹介しました。

 

■自分の気持ちを元に動いてみる「マイプロ」
そんな取り組みの成果の一つとして捉えられるのが「マイプロジェクト(通称:マイプロ)」の実施数。高校生が学校の授業とは別に、自分がやりたいことに取り組んでいくことを示したこの言葉は、津和野高校内でも広く浸透し学年を問わず、多くの学生がそれぞれの「やってみたい」にチャレンジしています。

今の津和野高校の特徴の一つは、それらのプロジェクトが周囲から強制されたものではなく、自分の意志による選択から始まっていること。

 


(津和野高校2年生のマイプロ「
アスギミック」。津和野に足を運んだ大人と高校生をつなぐ)

 

総合的な学習(探究)の時間などを通して自分の「やってみたい」を見つけ、周囲の後押しに頼りきらず自分で活動を進めていくことは、津和野高校の生徒の間では珍しくありません。

 

|最初からマイプロがたくさん行われる高校だったのか

 しかし、このような状況もここ最近になってから。高校魅力化事業の開始当初から関わっている、高校魅力化コーディネーターの山本竜也さんは次のように語ります。

 「昔は、マイプロを持っている生徒の方が圧倒的に少数派で、校内の他の生徒からも少し変わった目で見られるような状況でした」

 

 当初は、活動を巡りマイプロを実施している生徒と実施していない生徒の間でちょっとした対立もあったそう。しかし時間が経った今では、マイプロの伴走を担当する魅力化コーディネーターが把握するのも手一杯なほど、多くの生徒がマイプロに取り組み、自分の「やってみたい」に貪欲に活動をしています。

 

|なぜ自発的に「やってみたい」で動き、地域で活動する高校生が増えているのか

 津和野高校のマイプロに対する姿勢は「やってもいいし、やらなくてもいい」。コーディネーターが用意するのは、あくまでも一歩を後押しするための体験や気づきの機会。実際に動くのは、本人の意志です。

 そんな中で、なぜ自発的に動く生徒が増えているのか、その要因を高校生の声や町の様子を元に探ると、2つの大きな要因が見えてきました。

 

■大人との距離が近くなることで、見える世界が変わってくる

 津和野高校では、毎年秋に高校1年生と地域の大人が関わる「トークフォークダンス」が実施されます。限られた時間の中で、多くの大人と話をするこの機会、今年参加した1年生に感想を聞いてみると、こんな回答が返ってきました。

 「失敗エピソードがトークテーマの時、お互いに笑い合えたことが楽しかったです」

 「大人でも、共通のことがあると盛り上がれて、共感してもらえたことが面白かった」

 

 

 普段、なかなか大人と話をする機会が多くない人も、たくさん話をするという機会を通じて”大人”に対する心理的距離が縮まっているようでした。

 またこの他にも「もっと話を聞いてみたい」や「一緒に遊んでみたい」という声もあり、大人と交流することに対するハードルが大きく下がる機会になっているのではないかと感じました。

 

 これ以外にも様々な形で地域の大人との接点がある津和野高校。大人との距離が近づいていくことで、視野が広がったり、頼れる”地域の大人”がいることを知ったりする。それはつまり「学校の外にも、自分の関わる余地のある社会があることを認識する」ことにつながっているのかもしれません。自分の興味のあることがわかって、それが学校の中だけでは十分に学び切れないとわかると、町(≒社会)に出て地域の大人の元へいき、自分の好奇心を満たしていく。そんな動きが今の津和野の町で起こっているのかもしれません。

 

■地域の大人が、高校生を対等な存在として受け入れ、応援している

 どの町でも、基本的に高校生が頑張る姿は応援されていると思います。しかし津和野は、受け入れる姿勢がかなり柔軟。

 その象徴的な事例が「つわのスープ」です。2019年3月にクラウドファンディングが実施され、4月・10月とすでに2回実施されました(2019年12月現在)。毎回5組のプレゼンターが、津和野の町をよくするためのアイディアをそれぞれ発表するこの場。実は2回とも、高校生が1組ずつ登壇をしています。

 

 また先日行われた「未来の教科書」という大人の学び場にも、計4人の高校生が参加しており、高校生も大人も対等な立場として場に関わる様子が、町のあちこちで見られます。今では、高校生から地域の大人に直接連絡をとってやりとりをすることも増えています。

 第1回つわのスープ登壇者で津和野高校2年生の池本次朗くんは、町の魅力についてこう語っています。

 

 「この町の魅力は、やりたいって思ったことに対して、とりえずやってみなさい、と応援してくれる大人がいること」

 


(第一回つわのスープ登壇者/津和野高校2年生 池本次朗くん)

 

 町の大人が、高校生を子ども扱いしすぎず受け入れる。そんな環境が出来てきているからこそ、高校生も自発的に地域に入っていくことに前向きになれているのかもしれません。

 

|まとめ

 一歩踏み出す準備として、自分と向き合う機会を高校などで用意する。その過程で、高校生と地域の大人がそれぞれ距離を縮め、いい意味で対等な関係になること。高校生にとって、地域の大人という存在が身近になることが、今の津和野の高校生の「自発的に動き、地域に入っていく」という魅力になっているのではないかと感じました。高校生が地域に出ることは、強要されたものではなく、自分のやりたいことに向き合った結果として生まれる副産物のようです。

 

 次回後編では、地域とつながる高校生の存在によって、町にどんな影響がもたらされているのかを探っていきます。

 

【参考】

津和野高校HP(ツコウの魅力)

 

2020.01.30

文章・写真 舟山宏輝

 

【都市科学メモ】

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